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5G用通信半導体がボトルネックになる時代湯之上隆のナノフォーカス(12)(2/3 ページ)

“AppleとQualcommの和解”から、5G用通信半導体に関わるさまざまな事情が明らかになってきた。結論を一言でいえば、“最先端の5G通信半導体(の特許)がボトルネックになる時代が到来した”ということになる。本稿では、その詳細を論じる。

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HuaweiがAppleに5G用通信半導体を売り込み

 AppleがQualcommと訴訟合戦を展開し、Appleから5G用通信半導体の開発と製造を委託されたIntelは苦戦していた。この状況を見て、既に5G用通信半導体の開発に成功しているHuaweiの胡厚崑(ケン・フー)副会長兼輪番会長は4月16日、「Appleのような偉大な企業が5Gの時代に不在ではいけない」「(5G用通信半導体で)われわれはオープンだ」と述べ、Appleに5G用通信半導体を外販する意向を示した(日経新聞4月17日付)。

 現在、5G用通信半導体を供給できるのは、QualcommとHuawei傘下のHisiliconの2社しかない。AppleとQualcommは早々に和解したが、もし訴訟が長引いていたら、AppleはHuaweiから5G用通信半導体を調達することになった可能性もある。しかし、それは大変、まずい事態を引き起こす。

 米国は2018年8月13日に、「国防権限法」という法律を制定した(関連記事:米中ハイテク戦争の背後に潜む法律バトル)。「国防権限法」は2段階の日程で施行されるが、ことし2019年8月13日以降は、Huaweiなど中国企業5社と、米政府機関との取引が禁止される。

 したがって、もし、AppleがHuaweiから5G用通信半導体を調達し、iPhoneに組み込んでいたら、2019年8月13日以降、米政府機関との取引が禁止されることになったはずだ(図1)


図1:2019年8月13日以降、国防権限法で取引禁止 (クリックで拡大)

 また、東京五輪直後の2020年8月13日以降には、Huaweiの5G用通信半導体を組み込んでいないその他の製品、例えば、iPad、iMac、MacBookなど、Appleのすべての製品が、米政府機関と取引禁止になるところだった(図2)


図2:2020年8月13日以降、国防権限法で取引禁止 (クリックで拡大)

 もしそんなことになったら、米国は大混乱に陥るだろう。それを回避するためか、「トランプ大統領が安全保障上の理由から排除を呼びかけた」(日経新聞4月18日付)。つまり、Appleに対するHuaweiの5G用通信半導体の売り込みに対しては、米政府が介入した可能性がある。その結果、AppleはQualcommと和解する以外の選択肢が無くなったのかもしれない。

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