Neuromorphicがブレイクする予感 ―― メモリ国際学会と論文検索から見える動向:湯之上隆のナノフォーカス(13)(2/3 ページ)
2018年、2019年のメモリの学会「International Memory Workshop」(IMW)に参加し、見えてきた新メモリの動向を紹介したい。
IEEE Xploreを用いた論文検索
IEEE Xploreを用いた新メモリの論文数の検索結果を図3に示す。一目見て、ここ10年間で、ReRAMの論文数が飛躍的に増大していることが分かる。その次に増えているのはMRAMで、PCRAMやFeRAMはさほど増えていない。
さらに、ReRAMの論文について、その用途がNeuromorphicかどうかを分離した結果を図4に示す。図から分かる通り、Neuromorphic以外の用途のReRAMは2016年にピークアウトしている。ところが、Neuromorphic用途のReRAMの論文数が急増している。
この論文調査から、Neuromorphicが大きなブームとなっており、近い将来ブレイクして実用化されるかもしれないと思っていた。それ故、IMWにおけるNeuromorphicの論文動向に注目していたのである。そして、IMWでも、筆者の期待通り、Neuromorphicの論文シェアが増大していたわけだ。
なぜNeuromorphicがブームなのか
2016年に、Googleが開発した深層学習機能を持ったAI「アルファ碁(AlphaGo)」が、人間の囲碁のチャンピオンであるイ・セドル氏を破った。このニュースは、世界に大きく報じられ、これが切っ掛けになって世の中にAIブームが到来した。
確かに「アルファ碁」は強かったが、このAIには、1202個CPUと176個のGPUが使われていた。そして、その消費電力は25万W以上だった(図5)。一方、この日以降、人間は「アルファ碁」に勝てなくなったが、人間の脳の消費電力はたったの20Wである。
つまり、深層学習機能を持ったAIは必要だが、1202個CPUと176個のGPUで形成され、25万Wもの電力を消費するAIを、あちこちに置くわけにはいかない(個人が買うこともできない)。
そこで、囲碁では「アルファ碁」には劣るかもしれないが、わずか20Wで動作して、“そこそこ賢い”人間の脳を模したコンピュータのNeuromorphicが一躍脚光を浴びるようになったのである。
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