「起業活動の数と質」、日本がベンチャー設立で抱える根深き4つの課題:イノベーションは日本を救うのか(32)(2/4 ページ)
実は、日本は先進国の中でも「起業活動の活発度」が低い。それはなぜなのだろうか。筆者は4つの問題があると考えている。
「起業はリスク」、根強い“失敗への恐怖”
なんといっても、一番大きな理由として、「日本では、起業はリスクが高い」と見なされていることが挙げられるだろう。事業が失敗した時のリスクを考えると、なかなか起業には踏み切れないという人が多いのではないだろうか(図2、図6)
米国では、「やり直しがきく」「失敗に寛容」など、ベンチャー設立のインフラが整っている。故に、ベンチャーの設立が「ハイリスク、ローリターン」ではなく、むしろ「ローリスク、ハイリターン」と考えられている。
これに対し、日本は真逆だ。減点主義で、失敗に対して寛容とはいえない。一度失敗すると、まるで“前科がある”かのように捉えられ、立ち直るのが難しい。
また、起業した場合に生活が不安定になるというリスクに不安を感じているようだ(図3)。
大企業に勤めていて、スピンアウトしようとしたときのリスクも高い。例えば給与面では、会社への貢献度が、必ずしも正しく給与に反映されているわけではない(これは、会社の人事評価制度によるところも大きいが……)。多くの場合、特に若手社員の貢献度は、うまく報酬に反映されていないのではないだろうか。
40代を超えて、管理職/マネジャークラスになると急に給与が上がってくる環境では、そのポジションを捨てて新しくベンチャーを育てよう、と決断することは、なかなか難しい。家の購入や子供の教育費などでローンを多く抱えている場合も多いだろう。ビジネスでノウハウを積み、人脈もできて、起業するにはよいポジションにいても、ブレーキがかかるのも無理はない。
もう一つ、意外に重要なポイントが年金ではないだろうか。毎月積み立てたお金を自由に運用できる確定拠出年金(401k)は、起業した際に継続するのは難しい。ベンチャー企業で401kに対応しているところなど、ほぼない。早急にきちんとした手続きをしないと、今まで積み立ててきた金額は国民年金基金連合会に自動的に移換され、“おじゃん”になってしまうのだ。
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