GLOBALFOUNDRIES、ASIC事業をMarvellに売却:売却額は最大7億4000万米ドル
GLOBALFOUNDRIES(以下、GF)は、ASIC事業を最大7億4000万米ドルでMarvell Semiconductorに売却することに合意した。GFは、最先端のチップファウンドリーから専門性の高いプロセスのプロバイダーとなる3段階の再編計画を進めており、今回の売却はその最終段階となる。
GLOBALFOUNDRIES(以下、GF)は2019年5月20日(米国時間)、同社のASIC事業を最大7億4000万米ドルでMarvell Semiconductor(以下、Marvell)に売却することに合意した。今回売却するのは、GFがASIC設計サービス会社として分離独立させたAvera Semiconductor(以下、Avera)である。GFは、最先端のチップファウンドリーから専門性の高いプロセスのプロバイダーとなる3段階の再編計画を進めており、今回の売却はその最終段階となる。
Marvell「比類ないほど幅広いASIC製品を提供可能に」
GFのCEO、Tom Caufield氏が始めた再編計画は、今回の売却によって最終局面を迎え、2019年8月には完了する。一方、Averaを買収することによって、Marvellは5G(第5世代移動通信)基地局にも事業範囲を拡大することができ、有線および無線インフラ向けチップサプライヤーとしての地位も強化される。
MarvellのCEO、Matt Murphy氏は、買収発表後に行われたアナリストとのカンファレンスコールで、「AveraのフルカスタムASICの開発能力を獲得することで、Marvellの標準的な製品やセミカスタム製品のポートフォリオは強化される」と述べた。
また、Murphy氏は、「Marvellは今や一つの傘下で、標準的な製品、セミカスタム製品、フルカスタム製品という、比類ないほど幅広いASIC製品を顧客に提供できるようになった」とも語った。
買収条件に基づき(ただし、Marvellの株主による承認はまだこれからである)、Marvellは、GFに6億5000万米ドルの現金を支払うのに加え、特定の条件が満たされた場合、今後15カ月にわたり追加で9000万米ドルを支払うことになる。
Murphy氏は、「今回の買収は米国の規制機関によってレビューされる予定だが、中国の商務部による承認は不要だ」と述べた。
今回の買収には、Averaの収益源とデザインウィン、約800人の社員の転属も含まれる。加えて、MarvellとGFの間で、長期的なウエハー供給に関する契約が新たに結ばれる予定だという。
Averaは、2014年にGFが買収するまでは、IBMのマイクロエレクトロニクス事業の一部だった。Averaはアナログ、ミックスドシグナル、SoC(System on Chip)設計の能力を高めているほか、高速SerDes 、高性能組み込みメモリ、高度なパッケージングを含めたIPポートフォリオを強化している。
GFは2018年8月、全社的な再建計画の一環として、7nmプロセス技術の開発を中止することを発表した。それに伴い、ASIC事業をAveraとしてスピンアウトしたが、その狙いはTSMCと7nmプロセスに関連するビジネスを行えるようにするためだった。
GFは2018年8月に再建計画を発表した後、経営縮小のためにいくつかの事業売却を実施してきた。Averaの売却は2019年において3番目の売却であり、現時点で2019年最大規模となる。GFは2019年1月、シンガポールに保有していた200mmウエハー対応の工場「Fab 3E」を2億3600万米ドルで台湾のVanguardに売却。2019年4月には、米国ニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mmウエハー対応の「Fab 10」を4億3000万米ドルでON Semiconductorに売却している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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