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メモリ不況の夜明けは近い、市場動向から見たDRAMとNANDの挙動湯之上隆のナノフォーカス(14)(1/3 ページ)

世界半導体市場統計(WSTS)のデータを用いて市場動向をグラフにしてみたところ、両者の挙動が大きく異なることを発見した。本稿では、その挙動を示すとともに、その理由を考察する。その上で、二つのメモリ市場の未来を展望する。

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「スーパーサイクル」は“スーパー”な“サイクル”だった

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 ビッグデータの時代を迎えた2016年以降、メモリ市場が爆発的に成長した(図1)。2017年には、「スーパーサイクル」という流行語が生み出された。どこまで飛躍的な成長が続くのかと思っていたら、2018年後半にバブルがはじけたように、不況に突入していった。

 このメモリ不況の原因としては、Intelが10nmプロセスの立ち上げに失敗し続けたため、PC用やサーバ用プロセッサが供給不足となり、それらを当てにして製造されたメモリが市場に溢れて価格暴落を引き起したことによると分析した(拙著記事:「Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況」、2018年12月7日)。


図1 半導体種類別の四半期出荷額の推移 出典:WSTSのデータを基に筆者が作成(クリックで拡大)

 結局、「スーパーサイクル」とは、“スーパー”にメモリ市場がアップダウンする“サイクル”だったと言えよう。つまり、古くから知られている“シリコンサイクル”の一環として、ここ数年のメモリ市場の好況と不況があったということだ。

 となると、いずれは不況が明けて、好況がやってくるはずである。筆者がメモリ不況の原因と考えているIntelの担当者も、「当社の10nmプロセッサは、これまで出荷予定に遅れが生じていたが、今回は、2018年に発表したスケジュール通り、2019年6月に出荷を開始できる見込みだ」と述べている(関連記事:「Intelが7nm開発にメド、2021年に市場投入を予定」、2019年5月13日)。

 さて、図1のメモリは主としてDRAMとNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)であるが、世界半導体市場統計(WSTS)のデータを用いて市場動向をグラフにしてみたところ、両者の挙動が大きく異なることを発見した。本稿では、その挙動を示すとともに、その理由を考察する。その上で、二つのメモリ市場の未来を展望する。

DRAMとNANDの市場動向は大きく異なる

 図2に、DRAMとNANDの四半期ごとの出荷額を示す。このグラフを作成したとき、二つのメモリ市場の挙動があまりにも違うので、しばらく考え込んでしまった。


図2 DRAMとNANDの四半期出荷額の推移 出典:WSTSのデータを基に筆者が作成(クリックで拡大)

 DRAMには、1995年第3四半期、2000年第3四半期、2006年第4四半期、2010年第3四半期、2014年第4四半期、2018年第3四半期に、それぞれピークがある。ほぼ4〜5年おきにピークがあり、まさに“シリコンサイクル”があるように見える。

 ところが、NANDには、2018年第3四半期以外には大きなピークが無い。2016年第2四半期以降、急激に増大し始めるまでは、ほぼ直線的に市場が拡大していた。つまり、DRAMのような“シリコンサイクル”が、NANDには無いのである。

 なぜ、DRAMとNANDの市場動向がこれほど違うのか?

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