半導体業界のトレンドは「3次元化」が明確に VLSI 2019:過去最高の出席者数で大盛況(3/4 ページ)
2019年のVLSIシンポジウム(以下、VLSI)が6月9〜14日に、京都のリーガロイヤルホテルで開催された。今後の半導体業界の進む方向性を伺える内容が多かったのでレポートする。
656人が出席したShort Course
2日目の6月10日(月)には、以下の三つのShort Courseが行われた。カッコ内はVLSI事務局が発表した各Short Courseの登録者数である。
- CMOS Technology Enablers for Pushing the Limits of Semiconductors: Materials to Packaging(273人)
- Advanced 5G Circuits, Systems and Applications(114人)
- Opportunities and Challenges at the Intersection of Security and AI(174人)
以上に加えて、全てのShort Courseに登録した人が203人おり、これらを合計すると659人と過去最高を記録した。
Short Courseの出席者数は、ここ10年間で約2.4倍に増加した。この理由を次のように考えている。筆者の予想では、Short Courseの出席者には、装置メーカーや材料メーカーの技術者などが多いのではないかと思う。というのは、Technical Sessionでは、英語の論文を読み、英語の講演を聞かなければ、内容を理解することが困難である。これは、非常にハードルが高い。
一方、Short Courseでは、ホットなトピックスを一日集中して聞くことができる。その上、発表スライドの全てがPDFで配布されるため、英語の文章を読まなくても、図を見ればおおよその概要が理解できる。そのため、装置メーカーや材料メーカーにとってShort Courseは、格好の情報収集の機会となるからだ。
半導体の技術トレンド
筆者は、CMOS Technology関係のShort Course1に参加した。そこから見えてきた技術トレンドは、半導体デバイスは3次元化し、そしてチップを複数枚重ねる3次元アーキテクチャ化が進むだろうということだ(図8)。
図8 半導体の技術トレンド:3D Devicesから3D Architectures 出典:R. Clark, TEL, “Advanced Process Technologies Required for Future Scaling and Devices”, Short Course1, VLSI2019より引用(クリックで拡大)
しかし、微細化を続けるには、相当に難しい技術開発が待ち受けている。例えば、5nmノードの微細配線幅には、原子がたったの42.5個しかない(図9)。このような微細配線を形成するには、Self-Directedな成膜、Self-Limitedなエッチング、そしてSelf-Alignedな構造を駆使する必要があるだろう(図10)。
図9 ゲート長および微細配線の幅と原子数の関係 出典:R. Clark, TEL, “Advanced Process Technologies Required for Future Scaling and Devices”, Short Course1, VLSI2019より引用(クリックで拡大)
図10 Self-Directed、Self-Limited、Self-Alignedがキーワード 出典:R. Clark, TEL, “Advanced Process Technologies Required for Future Scaling and Devices”, Short Course1, VLSI2019より引用(クリックで拡大)
そして、さまざまなチップを重ねる3次元アーキテクチャが当たり前のように使われると考えられる。図11は、TSMCのチップ積層技術である。複数枚のロジックチップやメモリを3次元方向に積層し、Through-Silicon Via(TSV)を開けてCuでチップ間をつないでいる。
図11 TSMCの3次元インテグレーション技術 出典:C. H. Tung, TSMC, “3D Integration for More-Moore and More-than-Moore”, Short Course1, VLSI2019より引用(クリックで拡大)
TSMCは、“Chip on Chip”、”Chip on Wafer”および、”Wafer on Wafer”技術も開発しており、これらを”Wafer Level System Integration”、略して“WLSI”と呼称していた。なかなかしゃれたネーミングである。
微細化はスローダウンするかもしれないが、今後は、上記のようなデバイスの3次元化とチップを積層する3次元化が、ムーアの法則をけん引していくと思われる。
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