リカレント教育【前編】 三角関数不要論と個性の壊し方:世界を「数字」で回してみよう(59) 働き方改革(18)(3/8 ページ)
今回から前後編の2回に分けて、働き方改革の「教育」、具体的には「リカレント教育」を取り上げます。度々浮上する“三角関数不要論”や、学校教育の歴史を振り返ると、現代の学校教育の“意図”が見えてきます。そしてそれは、リカレント教育に対する大いなる違和感へとつながっていくのです。
そもそも「学校教育」とは?
さて、今回も、働き方改革実行計画から、「学習」に関する分野をピックアップしてみました。
このように、ほぼ全部の分野に関して「教育」への言及がありますが、比較的、その対応策が具体的に記載されているのは、「女性」と「子ども」です。これは、政府が、この2つの分野については、先行的に着手しているということを示しています。
これは、おおむね妥当な判断だと思います。まず、就職氷河期世代(30万人)、外国人労働者(100万人)と比べて、女性の労働人口は、2000万人以上です。マスの大きさが違い過ぎます。そして、子どもへの教育投資は、将来の日本への投資そのものといっても過言ではありません。この分野への投資を出し渋ったら、日本の将来はありません。
ところが、「働き方改革実行計画」の中では、各種の支援や補助金等についての言及はあるものの、具体的な施策についての言及はありません。教育にしても「どのような教育を、誰に対して、どのタイミングで施すべきか」という話が1ミリも登場しません。
子供の教育を、国家だけに押し付けるんじゃないよ
「リカレント教育」について説明する前に、まずは、そのリカレント教育の対(つい)となる、「学校教育」について、教育基本法から読み解いてみたいと思います。
学校教育の目的は「日本人の製造(育成)」であり、教育基本法には、その製造すべき日本人の仕様(スペック)と品質(クオリティー)が記載されています。
もっとも、私は、このスペック通りに製造され、クオリティーチェックされた日本人を見たことがありません。なにしろ私自身、「民主主義と文化的国家の発展を担い」「世界平和と人類への貢献ができる」というQA(Quality Assurance:品質保証)テストを受けたことがないのですから。
また、2006年に追加された、「公共精神」「人間性」「創造性」「伝統継承」に至っては、目標数値は言うまでもなく、ユースケース(事例)すら提示されていません。
ところが、その時の法改正で、「日本人の製造」を担う「製造責任者」だけは、具体的に記載されることになりました。
それを総括すると、子どもの教育を、国家だけに押し付けるんじゃね〜よ、ということになります。
具体的には、
「おい教師! 漫然と教科書読んでいるんじゃねーぞ。教え方を日々研究して、子どもの成績をきっちり上げるところまでが、お前らの仕事だ(9条1項)」
「おい保護者! 基本的な社会常識を教えるのは、お前らの仕事だ。なんでも国家や教師に頼ってんじゃねーぞ(10条1項)」、
さらに驚くべきことに、
「おい町内会! 地元を守りたいのであれば、地元の子どもの安全と、しつけの両方を街ぐるみでやれヨ(13条)」
とまで言っています。
このように、教育基本法は、「日本人の製造責任者」は示すようになりました。しかしその「製品内容(スペック、クオリティー、製造方法)」については、あいかわらず不明瞭なままです。
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