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新興企業の成長に不可欠、今こそ求められる“真のベンチャーキャピタリスト”イノベーションは日本を救うのか(33)(2/3 ページ)

今回は、日本のベンチャーキャピタルが抱える3つの課題を掘り下げたい。日本のベンチャーキャピタルの“生い立ち”を振り返ると、なぜ、こうした3つの課題があるのかがよく分かってくるだろう。

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独立系のVCが少ない

 2つ目の課題は、日本では独立系のベンチャーキャピタル会社がまだまだ少ないということ。米国では80%以上のベンチャーキャピタルは独立系で、ベンチャーキャピタリストの多くが、過去に自ら起業した経験を持つ。失敗した経験も成功した経験も豊富な人物が、ベンチャーキャピタリストとなっているのだ。

 米国ではベンチャーエコシステムの醸成に伴い、ベンチャー育成のスキルを持ったベンチャーキャピタリストの層がとても厚くなっている。これに比べ、日本は今でも6割以上のベンチャーキャピタル会社が金融機関の子会社あるいは関連会社だ。

 極端な言い方をすると、昨日まで銀行にいた人あるいは証券を売っていた人が、「今日からベンチャーキャピタリストでございます」と言ってベンチャー投資部門に移り、ベンチャー投資を始めているのである。このような人員が、スタートアップの経営や成長を支援できる力があるのかどうか、甚だ疑問だ。

 さらに言えば、これらの日本のベンチャーキャピタル会社の多くは、投資事業組合を運営するのではなく、銀行や証券会社の子会社として自己資金を投資している。つまり、「ベンチャーキャピタリスト」と言っても、プロフェッショナルというより「サラリーマン投資家」に近いというのが、筆者の印象だ。

 米国では、個々のベンチャーキャピタリストの報酬は、投資のパフォーマンスに成功報酬(carried interest)という形で直結しているが、日本のベンチャーキャピタル会社では、良い投資をしても、年末ボーナスが多少良くなるだけ、という違いもある。これには、親会社の人事/労務制度を全く無視するわけにはいかないという事情もあるのだろう。

 日本のベンチャーキャピタルの歴史を見る上で面白い例を一つ挙げよう。

 第2次ベンチャーブーム真っただ中の1980年代後半は、日本の技術産業が急激に成長していた時期でもある。そんな中、“ベンチャーキャピタル”として誕生したのが、日本合同ファイナンス(現ジャフコ)だった。

 米国では、ベンチャーキャピタルの構成は、ごく数人のパートナーのみという小所帯で、数百億米ドル規模の投資をしている(ここで言う“パートナー”とは、もちろん、経験豊かな人たちだ)。

 対して日本合同ファイナンスでは、200人ほどの新卒者を雇用し、全国の企業に当たらせ、営業的行為でもって株を購入していった。つまり、「放っておいても上場しそうな会社の株」を次から次へと購入していったのである。そのような案件は親会社である野村證券の引受部門に、ほぼ自動的に引き継がれた。投資したベンチャー企業の企業価値を上げるような活動は、ないに等しかったのだ。

 ちなみにジャフコは2017年に、40年以上にわたり資本関係を結んでいた野村グループから独立し、完全な独立系ベンチャーキャピタルとなった。

 このように、独立系ベンチャーキャピタルが日本でも増えてきたのは確かである。ただ、米国のように、企業価値を上げるための的確なアドバイスをベンチャー企業に与えられるベンチャーキャピタル会社は日本にどれだけあるのかーー。

 ここまで見てきて分かるように、同じように「ベンチャーキャピタル会社」とは名乗っていても、中身は日米で全く異なっていた。日本では、実務経験を持った人たちが非常に少なく、本来のベンチャーキャピタルの役割を果たせない組織ばかりだったのだ。

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