好調が続くHDD、データセンター向けで新しい動きも:まだまだニーズが高い(1/2 ページ)
NAND型フラッシュメモリの低価格化や、NVMe(Non-Volatile Memory Express)などSSD関連の技術革新にもかかわらず、HDD市場は依然として好調だ。
「I’m not dead yet(私はまだ死んでない)」は、英国のコメディーグループMonty Pythonの古典映画『Monty Python and the Holy Grail 』のセリフだが、このセリフはHDDの説明にも通じる。NAND型フラッシュメモリの低価格化や、NVMe(Non-Volatile Memory Express)などSSD関連の技術革新にもかかわらず、HDD市場は依然として好調だ。
半導体市場調査会社のObjective Analysisで主席アナリストをつとめるJim Handy氏は、「フラッシュへの移行は世界的に進んでいるとよく言われるが、私はそうは思わない。低価格のストレージではHDDが適している場合もある。フラッシュは価格が下がりプレミアムメディアではなくなったが、NANDフラッシュとHDDの価格には10対1ほどの差がある」と指摘し、「HDDがなくなることはないだろう」と述べた。
一方、ストレージの種類が増えると、ストレージとメモリの境界線は曖昧になっていく。かつてはハイエンドにはDRAM、ローエンドにはHDDというシンプルな構図だったが、ミドルエンドではフラッシュの利用が拡大している。Intelは、ここにも同社の「Optane」メモリが入り込む余地があると考えている。オフサイトのバックアップ向けストレージとして磁気テープが再び注目され始めているし、今日のプロセッサには複数のキャッシュがある。Handy氏は、「さまざまなストレージを利用することで、より安価にシステムの性能を向上できるのであれば、ストレージの種類を制限する理由はない」と述べている。
変わるHDD
NVMeやNVMe over Fabrics(NVMe-oF)によってSSDの利便性が向上したのと同様に、HDDはソフトウェアやアーキテクチャによって、よりインテリジェントな方法で利用できるようになってきている。
Western Digitalは2019年6月、クラウドやハイパースケールデータセンター向けのストレージ設計の一環としてHDDを活用する取り組み「Zoned Storage」を発表した。Zoned Storageアーキテクチャは、シングル磁気記録方式(SMR)のHDDやNVMeおよびSSDの新規格「ZNS(Zoned Namespace)」により、ゼタバイト規模のニーズに対応できるストレージ容量と優れた耐久性、低遅延QoS(Quality Of Service)を実現するとしている。
Western Digitalの製品管理担当シニアディレクターを務めるEddie Ramirez氏は、「SMR HDDを使うことで、新しいワークロード全てにNANDフラッシュやOptaneが必要なわけではないことを示した。同時に、汎用アーキテクチャ以外の何らかの技術も必要であることも示している」と述べる。
Ramirez氏は、「Western Digitalは、SSDとHDDの両方の市場に携わっているというユニークなポジションにある。このため、両市場の傾向を把握することが可能だ。データセンターでは、今後も引き続き、SSDとHDDの両方が必要とされるだろう」と述べている。
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