エッジAI向け低電力チップ、EUが総力を挙げて開発へ:3年プロジェクトが発足(1/2 ページ)
ベルギーの研究機関imecをはじめとする19の研究機関および企業が、EUの3年間プログラム「TEMPO(Technology & hardware for nEuromorphic coMPuting)」で、複数の新しいメモリ技術をベースとした低消費電力のエッジAIチップの開発を進めているという。
データ保護の観点でも求められているエッジAI
ベルギーの研究機関imecをはじめとする19の研究機関および企業が、EUの3年間プログラム「TEMPO(Technology & hardware for nEuromorphic coMPuting)」で、複数の新しいメモリ技術をベースとした低消費電力のエッジAIチップの開発を進めているという。
TEMPOは、19の研究および産業パートナーが国境を越えて協業する取り組みで、CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)やドイツのFraunhoferグループなどが参画している。協業体制に基づき、神経形態学的コンピューティング(neuromorphic computing)向けの新しいメモリ技術を適用しながら、プロセス技術やハードウェアプラットフォームなどの開発実現を目指していくという。複雑な機械学習アルゴリズムを必要とするモバイルデバイスにおいて、アプリケーションをサポートするための新しい手法を開発していく考えだ。
現在、このような種類のアプリケーションは通常、クラウドベースのサーバラックに送受信されるデータに依存している。しかし、クラウドベースの手法では、欧州の一般データ保護規則(GDPR)に準拠することが非常に難しい。そこで、代替手法として、自動車や、スマートフォンなどバッテリー式のモバイル機器といったエッジ上で機械学習(主に推論)を実行することが提案されている。それを欧州で開発しようというプログラムが、今回発表されたものだ。
上記は欧州の課題ではあるが、業界全体にとっても重要な懸念事項である。エッジAIや機械学習アルゴリズムは、自然言語処理を備えたスマートホームアシスタントや、顔認証技術を採用したセキュリティシステムの他、自動運転車など、日常的に使用する製品やアプリケーションにおいて、重要性が高まる一方だ。複雑な計算アルゴリズムは今後、成長の一途にあるとみられている。
GDPRへの準拠以外でも、クラウドの使用を避けなければならない理由はたくさんある。クラウドにデータを送信すると、電力を消費するだけでなく遅延も発生する。今回のプロジェクトでは、究極的には、エッジAIアプリケーションでインテリジェントかつエネルギー効率の高いローカルプロセッシングを実現することを目指す。
TEMPOは、既存のソリューションを、デバイスやアーキテクチャ、アプリケーションレベルで評価し、欧州のAIハードウェアプラットフォーム向けの技術ロードマップを構築、拡大していくことを目指す。このプロジェクトでは、MRAMやFeRAM、ReRAMなどのメモリを使用して、民生、自動車、医療など8種類のユースケース向けに、スパイキングニューラルネットワーク(SNN)アクセラレーターとディープニューラルネットワーク(DNN)アクセラレーターの両方を実装する予定だという。
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