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情報通信技術の進化が促す次世代社会「Society 5.0」福田昭のデバイス通信(193) 2019年度版実装技術ロードマップ(4)(1/2 ページ)

今回は、第2章の大テーマの一つである「情報通信」の前半部分を紹介する。ここでキーワードとなるのが「Society 5.0」だ。

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現実空間と仮想空間の融合が産業活性化と社会問題解決に寄与

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発行した「2019年度版 実装技術ロードマップ」に関する完成報告会(2019年6月4日に東京で開催)と同ロードマップの概要をシリーズでご報告している。今回はその第4回である。前回は完成報告会から、第2章の「注目される市場と電子機器群」の分類と定義についてご報告した。

 今回は、第2章の大テーマである「情報通信」「メディカル・ライフサイエンス(医療・生命科学)」「モビリティー」「新技術・新材料・新市場」の中から、最初の大テーマである「情報通信」の前半部分をご紹介する。このパートの発表者は前回に続き、Jisso技術ロードマップ専門委員会でWG1(市場動向/分析・課題抽出ワーキンググループ)の主査をつとめた森将人氏(パナソニック)である。


完成報告会のプログラム。プログラムで3番目の「注目される市場と電子機器群【情報通信】」の前半部分を今回は主にご報告している。出典:JEITA(クリックで拡大)

第2章第2節「情報通信」の目次。「2.2.1 情報通信概要」「2.2.3 IoTセンサ無線モジュール」「2.2.5 VR/AR/MR」の概要を、今回と次回でご説明する予定である。出典:JEITA(クリックで拡大)

 本シリーズの前回で述べたように、IoT/ビッグデータ/AI/ロボット/5Gといった技術が普及していくことで、産業と社会の変革が進行しつつある。日本では内閣府が、これからの社会のあるべき姿を「Society 5.0」と呼称し、2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略 2018」では「Society 5.0」の実現に向けたプロジェクト群(次世代モビリティ構築や次世代ヘルスケア構築など)を打ち出した。

 「Society 5.0」の前に相当する現在の社会は、「情報社会(Society 4.0)」と位置付けられる。この社会では、現実空間(物理空間、あるいはフィジカル空間)に存在する人間が仮想空間(サイバー空間)にアクセスして情報を入手し、分析する。言い換えると、社会の各分野で情報ネットワークの構築が進んでいる。ただし、社会全体における情報共有はあまり十分ではなかった。

 これに対して「Society 5.0」では、仮想空間と現実空間の融合によって分野間の情報共有が進み、「必要なときに必要な情報が提供される」ようになる、とする。JEITAでは、このような社会を「CPS/IoT社会」と呼称している。ここで略語「IoT(Internet of Things)」は良く知られているように、「モノのインターネット化」のことである。ありとあらゆる物がインターネットに代表されるネットワークと接続して情報をやりとりする。IoTは既に社会に普及しているともいえる。

 もう1つの略語「CPS(Cyber Physical System)」は、IoTに比べるとなじみが薄い。CPSとは「サイバーフィジカルシステム」の略称である。現実空間(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワークによって収集し、仮想空間(サイバー空間)で大規模データ処理技術などを駆使して分析することで知識化し、情報と価値を創出することによって産業の活性化や社会問題の解決に寄与するシステムを指す。CPSはこれから構築されていくシステムでもある。


「サイバーフィジカルシステム」の構造(左)と、「情報社会」から「CPS/IoT社会」への流れ(右)。出典:JEITA

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