日立、モーター関連設備の異常発生を自動で検知:電流データからAIが予兆診断
日立製作所は、AI(人工知能)を活用してモーター関連設備の異常発生を自動検知する予兆診断ソリューションを開発、2019年10月より提供を始める。
熟練保守員への依存度を軽減し、安定稼働を実現
日立製作所は2019年7月、AI(人工知能)を活用してモーター関連設備の異常発生を自動検知する予兆診断ソリューションを開発、2019年10月より提供を始めると発表した。負荷変動によるモーター電流の挙動を分析し異常を検知するため、導入時や保守時のコスト低減などが可能となる。
同社は2018年に、工作機械のモーターをセンサーとして活用し、消耗品の劣化を検知する技術を開発した。今回はこの技術をベースに、モーターメーカーとしてこれまで蓄積してきたOT(Operational Technology:制御・運用技術)と、独自AIによる解析技術を取り入れた。
開発したモーター関連設備向け予兆診断ソリューションは、電気室などにある制御盤に組み込まれた電流センサーを活用してデータを収集。測定した微小な電流データの変動を分析し、モーター関連設備の劣化状況や異常な状態を、機械学習により判断する。遠隔より設備の予兆診断を行うことができる。従来のように、製造現場に設置されたモーター本体やギアボックスに直接センサーを取り付ける必要はないという。
モーター関連設備の保守点検や診断作業はこれまで、熟練保守員が現場を定期的に巡回し、それぞれの装置や部品ごとに状態をチェックしてきた。開発したソリューションを導入することで、必要な時だけメンテナンスを行うCBM(Condition Based Maintenance)が可能となる。対象となる設備が多い工場では、保守作業の省人化/省力化さらには、診断基準の統一化などによる安定した設備稼働を実現することができるという。
日立はまず、開発した予兆診断ソリューションを鉄鋼制御システムの日立グループ製モーター向けに拡販する。同時に適用分野も順次拡大していく計画だ。
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