「光トランシーバー」は光伝送技術の凝縮:光伝送技術を知る(7) 光トランシーバー徹底解説(1)(2/4 ページ)
今回から、光トランシーバーについて解説する。データセンター、コンピュータや工場内ネットワークで使用される80km程度以下の中短距離光リンクを中心に、ストレージ、ワイヤレスやアクセス通信ネットワークなど、多様なアプリケーションで使用されている光トランシーバーを紹介する。
40種類もあるインタフェース
40種類もあるのは、システム構成、規模や性能によってコスト最小のソリューションを提供したり、既存の装置や敷設された配線を利用したシステムを提案したりするには、さまざまなインタフェースが必要になるからだ。
低価格の製品では低速のインタフェースを使用する。また、サーバとデータセンター内ネットワークを接続するToR(Top-of-Rack)スイッチや外部通信ネットワークに接続するルーターでは、接続する装置や機器、通信ネットワークインタフェースによって、異なるインタフェースがある。
さらに、ストレージシステムなどでは別のインタフェース規格がある他、複数のインタフェースやレセプタクルを有する装置もある。
このように、システム構築の規模や複雑さが増えるほど、図3のようなリストは膨大になっていく。
さて、レセプタクルに挿入し、図3のリストにあるインタフェースを実現するのが、トランシーバーモジュール(以後、単にトランシーバー)である。お気付きかと思うが、ここまで、インタフェースやトランシーバーモジュールという用語に、「光」を付けることを避けてきた。
それは、図3の中に、光ではなく電気ケーブルを使用したインタフェースがあり、それに対応したモジュールがあるからだ。「CR」と表記されているインタフェースである。これ以降、本記事で解説するのは主に光インタフェースと光トランシーバーである。図3のようなインタフェースリストを見たときに、エンジニアの皆さんが感じるであろう「モヤモヤ」を、少しでも晴らすことができればと思っている。
光トランシーバーのForm Factor
図3のPortの種類がトランシーバーの型式を特定する。例えば、「OSFP Port」はOSFPという型式のトランシーバー(OSFPトランシーバー)をOSFPレセプタクルに挿入することで、インタフェースが実現される。OSFPトランシーバーは400G向けに規格化されたトランシーバーの種類だ。
「OSFP」のような型式は形状以外にも電気信号などの規格もきちんと決められているが、業界用語としてフォームファクター(Form Factor)と呼んでいる。同様に、QSFP-DD、100G QSFP、QSFP+もForm Factorである。100G QSFPについては標準化された名称があり、「QSFP28 Form Factor」という。先端技術を使用した製品では、標準化が後になることも珍しくない。
100Gと400GのトランシーバーのForm Factorを図4に示す。図4は、2017年にサポートされていた100Gの7種類、そして400Gの3種類のトランシーバーのForm Factorを、回路基板上方から見た最大サイズで示したものだ。現在はこれに加え、DSFP56、SFP56-DD、SFP112、QSFP112などのForm Factorが議論されている。
*2)暮石和宏、JANOG44 Meeting、July, 2017、参考
これらの多様なForm Factorが存在するのは、さまざまなユーザー要求にその時々の技術で応えようとしているからだ。小型・低消費電力化、取り扱いやすさに加え、1つのForm Factorで多く(できれば全部)のインタフェースを搭載できることなどである。
また、トランシーバーが接続される装置の回路基板に搭載されたICのインタフェースにも影響される。Form Factorの進展は、光デバイスの性能改善に因るものもあるが、「ムーアの法則」によるIC進化の寄与も大きいのだ。基本的に、小型のForm Factorが進化系である。
だが、新しいForm Factorのトランシーバーが出るたびに装置を設計しなおすことは経済的ではない。また、最新のインタフェースを搭載することで差別化できる装置では、小型のForm Factorを待てないこともある。
こういった理由で、同じインタフェースを有するがさまざまなFrom Factorのトランシーバーを挿入する装置が市場に送り出される。このため、技術者はこの多数のForm Factorに関する知識も必要になってくるのだ。
Form Factorには、下位互換(Down Compatible)を持つものがある。図2では「QSFP 100」と書かれているポートが、図3では「100G QSFP(QSFP28)」と「QSFP+」の2種類に対応するポートが記述されている。QSFP28は100G向けのForm Factorだが、40G向けQSFP+に対してDown Compatibleとなっている。つまり、QSFP28のレセプタクルに、QSFP+を挿入できるように規格化されている。これにより、QSFP28とQSFP+の両ポートをサポートするLine Cardを設計できる。
同様にQSFP-DDは、QSFP28とQSFP+に対してDown Compatibleになっている。このように、Form Factorの下位互換性を調べることも重要になるのだ。
これらのForm Factorには、Multi-Source Agreement(MSA)という業界標準が採用されている。MSAは複数の会社が規格化を行うもので、市場に受け入れられたものが業界標準の形態として生き残っていく。MSAについては、後の方で詳しく説明したい。
このようにForm Factorを知ることは、光トランシーバーを理解する第一歩となるのだ。
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