不況知らずのEDA業界、過去最高レベルの成長:半導体業界は不調でも
米中貿易戦争が激しさを増し、半導体業界の低迷も目立つ中、2019年第1四半期におけるEDA分野の売上高が過去最高レベルの成長を遂げたことは驚きに値する。
米中貿易戦争が激しさを増し、半導体業界の低迷も目立つ中、2019年第1四半期におけるEDA分野の売上高が過去最高レベルの成長を遂げたことは驚きに値する。
2019年第1四半期のEDA全体の売上高は、2018年第1四半期から16.3%増となる26億米ドルだった。業界団体であるEDA Allianceによると、EDA売上高の4四半期移動平均(直近の4四半期と過去4四半期を比較)は6.1%増加したという。
もちろん、EDAの売上高は、EDAがサービスを提供する半導体業界に完全に追随するわけではない。しかし、半導体の売上高が10%以上減少している年にEDAがこのような堅調な成長を遂げたことを、多くの人々が意外に感じた。Mentor Graphicsの名誉CEOでESD Allianceの運営審議会のメンバーであるWally Rhines氏も、その一人だ。
Rhines氏は、ESD Allianceが2019年初めにセールスレポートを公開した後にEE Timesが行ったインタビューで、「EDAの成長は非常に堅調だった。特にいくつかのカテゴリーで、驚くような成長が見られた」と話していた。
実際に、ESD Allianceの調査によると、サービスを除く全てのカテゴリーが2018年第1四半期と比べて10%以上成長している。具体的には、CAE(Computer Aided Engineering)、ICの物理設計と検証、プリント基板とマルチチップモジュール、半導体IP(Intellectual Property)である。また、日本を除く全ての地域が前年比で成長し、北米を除く全ての地域が四半期比で成長している。
現在EDA業界最大のカテゴリーであるIPの売上高は、2018年第1四半期から14.8%増となる8億7610万米ドルだった。CAEの売上高は、前年同期比20.2%増となる8億4070万米ドルだった。
米国の市場調査会社であるPedestal Researchでリサーチディレクターを務めるLaurie Balch氏は、「表面上は、この状況は半導体業界で聞かれる情報と矛盾しているように思える」と述べている。
Rhines氏によると、半導体市場の苦境を踏まえてこの堅調な成長について最も論理的に説明するとすれば、EDAの幹部が数年前から主張しているように、EDAツールを購入する企業数の増加が挙げられる。注目度の高いシステム企業やクラウド企業が独自のチップを設計するだけでなく、システムレベルの設計にツールを使用するシステム設計者が増えているという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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