インフルエンザウイルスを高い感度で検出するバイオセンサー:福田昭のデバイス通信(196) 2019年度版実装技術ロードマップ(7)(2/3 ページ)
今回は、「メディカル・ライフサイエンス(医療・生命科学)」から後半部分の概要を報告する。特に、2017年度版ロードマップの読者アンケートで関心が高かった「バイオセンサー」に焦点を当てる。
バイオセンサーと通常のセンサーの違い
センサーとは、物理量の変化や特定化学物質の存在などを検知し、電気信号に変換する機能を備えた素子である。光を電気信号に変える光電変換素子(光センサー)、温度変化を電気信号に変える素子(温度センサー)、圧力変化を電気信号に変える素子(圧力センサー)、特定の気体分子を検知して電気信号に変える素子(ガスセンサー)などが、良く知られたセンサーだろう。
これに対してバイオセンサーは、特定の物質だけを認識する性質(「基質特異性」と呼ぶ)を備えた分子(「バイオ分子」)を使う。バイオ分子と、バイオ分子が特定の物質を認識したことを読み取って電気信号に変換する部分(「信号変換素子」)で構成されていることが、バイオセンサーが通常のセンサーと大きく違う点である。
バイオ分子は、生物由来の材料であり、具体的には抗体、酵素、糖鎖、蛍光色素、アプタマー、ペプチドアプタマー、分子インプリント、有機化合物、無機化合物などがある。その多くは耐熱性が低く、またウエットな環境でないと機能しないといった制約を抱える。取り扱いと保管は簡単ではない。
生物学と化学のノウハウを融合させたバイオ分子の製造
バイオ分子の製造には、生物学的なノウハウと化学的なノウハウの両方が要求される。例えば代表的なバイオ分子である抗体の製造方法には、動物の免疫システムを利用する方法と、遺伝子組み換えを利用する方法がある。また最近になって注目されている製造方法に、「分子インプリント(MIP:Molecularly Imprinted Polymer)」がある。MIPでは、検出しようとする物質(抗原)を高分子でくるんだあとに、抗原を抜き取ってバイオ分子を合成する。
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