ダイヤモンド基板で放熱性を大幅に向上したGaN-HEMT:三菱電機が2025年の量産化目指す(1/2 ページ)
三菱電機は2019年9月2日、単結晶ダイヤモンド放熱基板を用いたマルチセル構造のGaN-HEMTを開発したと発表した。Si基板やSiC基板を使う従来のGaN-HEMTに比べ、電力効率と出力密度が10%向上し、温度上昇は最大6分の1に抑えられたという。
熱伝導率が高いダイヤモンド基板に置き換える
三菱電機は2019年9月2日、単結晶ダイヤモンド放熱基板を用いたマルチセル構造のGaN-HEMTを開発したと発表した。Si基板やSiC基板を使う従来のGaN-HEMTに比べ、電力効率と出力密度が10%向上し、温度上昇は最大6分の1に抑えられたという。量産化に向けた開発を進め、2025年を目標に、移動体通信基地局や気象レーダー、衛星通信用の高周波電力増幅器への展開を目指す。
近年、通信基地局や衛星通信システムなどの高周波電力増幅器では、高効率かつ高出力なGaN-HEMTが使われるようになっている。ただ、Si基板やSiC基板を使って製造するGaN-HEMTでは、SiやSiCの熱伝導率が低いため、GaN-HEMTの熱をうまく放熱できず、GaN-HEMTが自己発熱により性能が劣化するという課題があった。
そこで三菱電機は、Si基板/SiC基板の代わりに、熱伝導率が高い単結晶ダイヤモンド基板を使うことで、GaN-HEMTの局所的発熱を外部に放熱できるようにした。
研磨と接合、この2つが鍵に
今回発表したGaN-HEMTは、まず直径100mmのSi基板上にGaN-HEMTを作製後、Si基板を除去し、原子レベル(10−10mオーダー)で平たん化する。それを、同様に原子レベルで平たん化した単結晶ダイヤモンド基板と、「ナノ表面改質層」と呼ばれる層を介して、常温で直接接合して作製したものになる。なお、この直接接合技術は産業技術総合研究所(産総研)が開発した技術である。
この作製方法には、2つのブレークスルーポイントがあると三菱電機は説明する。1つ目は、原子レベルで平たん化する研磨技術だ。これは三菱電機が開発した。「GaNもダイヤモンドも非常に硬い物質なので、チップのサイズである数ミリ〜1cm角という大きな面積を、原子レベルで平たん化できるように研磨するのは極めて難しかった」と同社は説明した。
2つ目は、ナノ表面改質層を介した直接接合技術である。この改質層は厚みがわずか5nmと非常に薄いので、熱伝導への影響がほとんどないという。三菱電機は、この改質層の素材について「シリコン系の材料と聞いている」とだけ述べた。
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