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ダイヤモンド基板で放熱性を大幅に向上したGaN-HEMT三菱電機が2025年の量産化目指す(2/2 ページ)

三菱電機は2019年9月2日、単結晶ダイヤモンド放熱基板を用いたマルチセル構造のGaN-HEMTを開発したと発表した。Si基板やSiC基板を使う従来のGaN-HEMTに比べ、電力効率と出力密度が10%向上し、温度上昇は最大6分の1に抑えられたという。

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8セル構造のチップの試作に成功

 三菱電機は、これらの技術を用いて、マルチセル(8セル)構造のGaN-HEMTチップを試作した。チップサイズは2.8×0.5mm。出力30W級の製品に相当するという。「これまでに報告されているダイヤモンド放熱基板を用いたGaN-HEMTは、いずれも1セルの小さな試作チップである。今回のような、マルチセルの製品レベルでのチップ試作に成功した例は、『世界初』である」(三菱電機)


試作した、8セル構造のGaN-HEMTチップ 出典:三菱電機(クリックで拡大)

 三菱電機は、開発したGaN-HEMTの評価結果も示した。

左=電圧を印加して動作させたときの表面温度。左端の従来品では、ゲート電極の部分に局所的な発熱が見られる(黄色や赤になっていることから、高温になっていることが分かる)/中央=ドレイン電圧が増加した時の特性評価。開発したGaN-HEMTでは、性能の劣化が見られない/右=電力効率。従来よりも約10ポイント向上している 出典:三菱電機(クリックで拡大)

 三菱電機は、「今回の開発によって、GaNが持つ本来の性能を発揮できるようになった。これにより、既存のGaN-HEMTが使われている高出力電波機器の低消費電力化を図れるようになる。同時に、GaN-HEMTを適用できる用途がさらに拡大し、現在真空電子管が使われているアプリケーションにおいて、GaN-HEMTへの置き換えを狙うことも可能になるだろう」と説明する。例えば5G(第5世代移動通信)基地局に適用すれば、既存品に比べて高出力になるので、より電波を飛ばせるようになる可能性がある。


開発したGaN-HEMTによって、GaN-HEMTを適用できる用途が拡大できるとする。なお、今回開発したGaN-HEMTのターゲット周波数は4GHz帯なので、より高い周波数に適用するのであれば、構造をチューニングする必要があると三菱電機は説明した 出典:三菱電機(クリックで拡大)

 今後は、量産化に向けた開発とともに、さらなる大面積化を目指し、単結晶ダイヤモンドを多結晶ダイヤモンドに置き換える開発も進めていく。

 量産化においては、「ダイヤモンドの形成」「平たん化(研磨)」「直接接合」という3つのプロセスが、新たに製造工程に加わることになる。その分、プロセスが複雑になるのでコストの上昇が懸念されるが、三菱電機はそれについて「確かにコストは上昇するが、それに見合った性能のデバイスを提供できれば十分に元は取れると考えている。さらに、単結晶ではなく多結晶ダイヤモンドを使うことで、価格を抑えることができると考えている」と語った。

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