シェア2位に躍り出たSTの汎用マイコン事業戦略:12年間で3%未満から20%超に(3/3 ページ)
STMicroelectronics(以下、STM)は2019年9月、東京都内で車載向けマイコンを除いたマイコン事業(=汎用マイコン事業)に関する記者説明会を開催し、2007年から展開するArmコアベースの汎用マイコン製品ファミリ「STM32」で右肩上がりに市場シェアを獲得してきたことを強調。同時に、さらなる事業成長を目指した投資を継続するとの方針を説明した。
新たな用途開拓も推進
こうした4つのニーズに対応する投資を行いSTM32のさらなる製品力強化を実施しながら、より広範なマスマーケットでのSTM32の浸透を図るため、STM32にとっての新しい需要を創造することにも注力する。具体的には、モノクロLCD搭載機器や、DSP搭載モーター制御機器、8ビットマイコン搭載機器など、これまでSTM32と比較的距離のあった用途に対し、STM32の搭載を促していく。
モノクロLCD搭載機器に対しては、STM32を使用して低コストかつ軽い開発負担でのカラーLCDへの置き換えを提案する。STMは2018年に、ローパワーマイコンでも軽快なGUIを実現する開発ツールを手掛けるDraupner Graphicsを買収。DraupnerのGUI開発ツール「TouchGFX」とSTM32を組み合わせることで、モノクロLCDを搭載している機器に対し低コストかつ軽い開発負担でのカラーLCDへの置き換えを提案しているわけだ。TouchGFXとSTM32との組み合わせは「モノクロからカラーへの置き換えというエントリーレベルだけでなく、画像を回転、拡大縮小するようなより高度なGUIを実現する場合にも有効なソリューション。順次、提案の幅を広げていく」(Colonna氏)とする。
現状、8ビットマイコンなど「32ビットマイコンの搭載が考えられなかった用途」(Colonna氏)に対しては、このほど、32ビットマイコンながら8ピンパッケージを採用した「STM32G0シリーズ」を製品化している。
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