ウェアラブル向けマイコンの進化に必要な2つの要素、きっちり応える欧米中:製品分解で探るアジアの新トレンド(43)(1/3 ページ)
今回は、HuaweiとXiaomiのウェアラブル機器を分解する。それらに搭載されたマイコンから分かることは、「ウェアラブル機器向けのマイコンに必要な要素にしっかり沿って、進化している」ということだ。
2019年、中国の大手スマートフォンメーカー各社は、第3世代や第4世代となるスマートウォッチを相次いで発表、発売した。Appleの「Apple Watch」シリーズやSamsung Electronicsの「Galaxy Watch」などを追撃するように、自社のスマートフォンとの連携も高め、高度なセンシングも実現できるものとなっている。
今回は中国を代表するメーカーHuaweiから2機種、Xiaomiから1機種のスマートバンド/スマートウォッチを取り上げる。なお、弊社は今回報告する3機種以外にも多数の腕時計型/リストバンド型ウェアラブル機器を分解しているので、興味ある方はぜひ弊社に問い合わせていただきたい。
Bluetooth 5対応のArmマイコンを搭載
図1は、2019年3月に発売されたHuaweiの第3世代スマートバンド「HUAWEI Band 3」である。有機ELディスプレイを備え、心拍数や睡眠センサー、スポーツのコーチングなどを行う。スマートフォンとの連動性も高く、通知の表示、検索、リモート操作なども可能だ。特筆すべきはAI(人工知能)機能をウェアラブル側で有していることだろう。センサーとAIアルゴリズムを組み合わせた「HUAWEI TruSeen 3.0」を組み込み、精度の高い心拍モニターを連続的に実行するという。心拍異常には警告も行う。
内部は図1のように1枚の基板と電池、ディスプレイ、センサーで構成されている。基板の左端にはバイブレータが装着され、振動での注意や情報の受信などを知ることができるようになっている。6軸モーションセンサーに加え、内蔵メモリと通信マイコンが配置されている。通信マイコンは低消費電力で定評のある米Ambiq Micro(以下、Ambiq)の第3世代製品「Apollo3」が採用されている。
Apollo3は既に多くの製品で採用が進む、Bluetooth 5.0対応のArmマイコンだ。米SparkFun Electronicsは同マイコンを用い、Googleの機械学習向けライブラリ「TensorFlow」を利用して機械学習を実行する評価ボードを2019年に発売している。またシチズンの「エコ・ドライブ」でも、同マイコンを用いたスマートウォッチが存在する。
Apollo3は1チップに通信用のRF回路と、不揮発メモリ(フラッシュメモリ)を1MB搭載し、CPUコアにはArm「Cortex-M4」を用いている。TSMCの40nmプロセスで製造されている。センサーを接続するA-Dコンバーターは分解能14ビットで、15チャンネルを有している。
Apolloシリーズは、体温で充電するMatrixの「Power Watch」など低消費電力のウェアラブル機器に採用された歴史を持つ。その他多くの腕時計型、リストバンド型ウェアラブル機器に活用されてきた。
Huaweiは、スマートフォン向けの「Kirin」プラットフォームや監視カメラ用の画像処理プロセッサ、ネットワーク用半導体では世界トップクラスのラインアップを取りそろえるが、マイコン系は若干手薄だ(ただしNB-IoTなどでは、不揮発メモリと通信機能とマイコンを1チップ化した通信マイコンを既に開発し、販売している!)
通信とマイコンの融合はIoT(モノのインターネット)やウェアラブルでは必須である。チップの点数が減るからだ。ウェアラブルの第1世代では、通信、マイコン、センサーの3点セットで構成されていた。第2世代では通信マイコンとセンサーの2チップとなり、第3世代では通信マイコンがBluetooth5.0に対応するなど進化が進んでいる。AmbiqのApolloシリーズは通信マイコンとしての要件に加え、サブスレッショルド領域で動作させるという特長を持っており、低消費電力という魅力もあるチップとなっている。今後も多くのウェアラブル機器やIoTエッジでの採用が進むだろうチップの一つである。
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