ママさんたちが奮闘! 小学生のための“手作り”ラズパイ教室:MIT卒ママ&IEEEフェローが全面支援(1/2 ページ)
「今度はScratchGPIOで7セグメントLEDを光らせましょう」「は〜い!」――2019年9月、浜田山小学校(東京都杉並区) の理科室では放課後、児童と”お母さん講師”との、こんなやりとりが響いていた。開催されていたのは、小型コンピュータ「Raspberry Pi」を使ったプログラミング教室「パイ・テック・クラブ」だ。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の保護者と”ママ友”たちが4年前に創設した後、IEEEフェローの専門家による支援のもと、児童の母親たちが自ら講師となって活動しているという。
「今度はScratchGPIOで7セグメントLEDを光らせましょう」「は〜い!」――2019年9月、浜田山小学校(東京都杉並区) の理科室では放課後、児童と”お母さん講師”との、こんなやりとりが響いていた。開催されていたのは、小型コンピュータ「Raspberry Pi」を使ったプログラミング教室「パイ・テック・クラブ」だ。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の保護者と”ママ友”たちが4年前に創設した後、IEEEフェローの専門家による支援のもと、児童の母親たちが自ら講師となって活動しているという。
そもそも『教育用途』のRaspberry Pi
2012年2月に初代モデルが登場して以来、2018年までに出荷台数が2200万台を超えるなど、高い人気を誇るRaspberry Pi(通称ラズパイ)。近年ではコストや頑丈さ、プログラマブルといった利点から産業用途での注目が集まり、出荷数の半分以上が産業用途向けになっているというが、もともとは子供や学生の教育向けとして開発されたものだ。
当然、教育用途でも大きく貢献しており、Raspberry Pi財団の創設者で、Raspberry Piの開発者でもあるEben Upton(エベン・アプトン)氏は、「ケンブリッジ大学の関係者に取材したところ、面白い傾向が分かった。面接官が受験生にコンピュータプログラミングを始めるきっかけを尋ねたところ、多くの受験生の答えがRaspberry Piかロボットだったという」と話している。
プログラミング教室、活動の主体は『普通のママさん』
パイ・テック・クラブは、この「Raspberry Pi」を使ったプログラミング教室が日本ではあまりなかった2015年に、当時、浜田山小学校に子供が通っていたMIT出身で大手半導体メーカー勤務の岩崎友こ氏が、数名の”ママ友”とともに創設。さらに、「日本の子供たちに役立つことをしたい」と、岩崎氏の父でIEEEフェローの専門家、Seiki Ogura氏が活動を支援しているという教室だ。4〜12月の間、全21回に分けた講座を放課後の理科室で開催しており、1クラスに小学4年生以上の児童約20人が参加している。保護者間で評判となり、現在は近隣の杉並第二小学校でも実施しているという。
岩崎氏とOgura氏は米国在住で、岩崎氏は教材を作成、監修。Ogura氏は機材の手配などのほか、スタッフの相談役として全面的なサポートをしているという。ただ、現場で実際に講師となって指導を行うのは、児童の保護者である「普通のママさん」たちだ。
専門家の監修があるとはいえ、「ほとんどみんな知識がゼロからのスタート」であり、時間的な制約も多い母親たちが、同じく初めてRaspberry Piに触れる児童が理解できるようプログラミングの教育をする――。決して簡単ではない取り組みだが、Raspberry Piやプログラミングの学習から教室の手配、資料の見直し、講師役の持ち回りまでお互い支え合いながら、課題を解決してきたという。
現在、講師役として中心的立場を担っている井上優子氏も、2年目に娘を教室に参加させたことがきっかけで「ほぼゼロからスタートした」一人。2年目以降、子供たちの理解度を考慮しながら、画像の差し替えやより分かりやすい文章への変更、そして、誰でも講師ができるようなセリフの作成など、工夫を続けてきたという。井上氏はこの日も、理科室の教壇に立ち、「1つ1つのワイヤをつなげて7セグメントを光らせるのは楽しかった?」など、明るく児童たちに語り掛けており、児童らも元気な声で答えていた。
講師役以外にも、児童2〜3人に対して「お母さんスタッフ」1人がつく形でサポートも行っている。こうして参加している母親たちも、児童を指導できるよう事前に学習をしている。「児童一人一人にしっかり教えるためにも、2〜3人につきお母さんスタッフ1人は必要」という。
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