製造装置市場にジワリと進出する韓国、ローカルでは独占分野も:湯之上隆のナノフォーカス(19)(1/3 ページ)
製造装置市場における企業別シェアを分析する。分野によっては韓国企業が着実にシェアを上げている。収束する気配のない日韓貿易戦争が続く中、日本企業は、韓国市場で失うであろうシェアを別の地域で補う必要がある。
液体材料を使う製造装置は日本が強い
2010年に、各種半導体製造装置の企業別シェアを分析したところ、コータ・デベロッパ、CMP装置、洗浄装置は、日本のシェアが高いことが分かった(参考記事:「JBPRESS、『日本半導体を復活させる「4番でエース」技術とは』」、2010年11月30日)。
これらの装置は、それぞれ、レジスト、スラリー、各種薬液などの液体材料を使う。従って、これら装置のプロセス技術には、ハードウェアと液体材料との擦り合わせが必要であり、そこに日本人の強みが生きるため、日本企業のシェアが高いと推論した。
それから約10年が経過した。液体材料を使う製造装置は、相変わらず、日本企業が強みを発揮しているだろうか?
本稿では、2018年時点での各種製造装置の企業別シェアを分析する。前回の分析には、電子ジャーナルが出版した『半導体製造装置データブック』の2007年のデータを用いた。しかし、電子ジャーナルは2015年で廃業してしまった。現在、製造装置の企業別シェアが分析できるデータブックとしては、グローバルネット株式会社(GNC)の『世界半導体製造装置・試験/検査装置市場年鑑』がある。
そこで、本稿では、まず、GNCのデータブック(2008年版)を用いて再度、2007年の各種製造装置の企業別シェアを分析する。次に、GNCの最新のデータブック(2019年版)を用いて2018年の分析を行い、約10年間に製造装置の企業別シェアにどのような変化があったかを明らかにする。
結論を先取りすると、液体材料を使う各種製造装置は、依然として日本企業のシェアは高い。しかし、韓国企業がジワリと台頭してきたことが分かった。そして、韓国市場に限定すると、韓国のローカルメーカーが一部の装置でトップシェアを獲得するなど、飛躍的な成長を遂げていることが明らかになった。
2019年7月に始まった日韓貿易戦争は、いまだ収束する気配がない。このことから、韓国市場における日本企業のシェアは今よりもっと低下し、韓国ローカルメーカーがさらにシェアを増大すると考えられる。そのため、日本企業は、韓国で失ったシェアを、どこか別の地域で補填する必要がある。そして、その地域とは、中国市場であることを論じる。
2007年の製造装置の企業別シェア
図1に、2007年の各種製造装置の企業別出荷額シェアを示す。コータ・デベロッパでは東京エレクトロン(TEL)が83.3%とシェアを独占している。また、バッチ式洗浄装置では、大日本スクリーン(DNS、後にスクリーンに社名変更)とTELなどの合計で日本が87.1%を独占している。
加えて、露光装置がニコンとキヤノンの合計で49.4%、枚葉式洗浄装置がDNSや芝浦メカトロニクスなどの合計で49.3%、CMP装置で荏原製作所などが39.3%のシェアを占めている。
やはり、液体材料を使うコータ・デベロッパ、バッチ式と枚葉式の2種類の洗浄装置、CMP装置では、日本のシェアが高いことが確認できた。
一方、韓国企業では、SEMESが、コータ・デベロッパおよび枚葉式洗浄装置で、それぞれ、2.5%および1.2%のシェアを占めているだけであり、世界での存在感は極めて小さい。
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