次世代メモリのPCM、「Optane」以外の動向は?:コスト競争力をどう実現するのか(2/2 ページ)
PCM(相変化メモリ)は2019年の初めに、注目すべき3つの新しいメモリ技術の一つとして取り上げられた。その主な理由は、Intelが「3D XPoint」メモリ(PCMであることが明らかになっている)を「Optane」ブランドで本格的に展開し始めたからだろう。では、3D XPoint以外のPCMについてはどうだろうか。
コスト競争力は3D NANDに勝てず
「PCMは、新興メモリが直面する障壁に今もなお直面している。コスト面では、現存の技術、特にフラッシュメモリの座を奪うことは難しい。だが、より多くのセルを集積して各セルのビット数を増やせば、次のマイルストーンであるフラッシュメモリに匹敵するPCMの実現も近いだろう。材料に関しては、3D Xpointが商用的に安定供給されていることから分かるように、PCMは好位置につけている」(Pozidis氏)
CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)のAdvanced Memory Labを率いるEtienne Nowak氏は、「PCMの関連材料の歴史は、50年近く前にさかのぼることができる。研究が増加したのは過去10年のことだが、同材料は十分に解明されている。PCMは通常、硫黄やセレン、テルルなどのカルコゲン族のガラス材料で構成されている。プログラミングメカニズムとして熱を使用することで、これらの相変化材料は、高度なアモルファス(非晶質)材料配置から結晶配列へと変化する。抵抗レベルは材料の並びによって決まるため、ウエハーの中心がエッジと同じ構成になるように、材料を適切に積層する必要がある。これが、相変化に影響する」と述べている。
材料はよく知られたものであるが、Nowak氏は「まだ改善の余地がある」と述べている。同氏は、「物理学の観点から言えば、まだこの材料の限界には達していない。製造の観点から言えば、関係する全ての材料には積層に関する固有の課題があるため、小型化には課題が伴う」と説明した。
ドイツMerck KGaAのPerformance Materials Businessの一部門であるIntermolecularは、世界の半導体メーカーと協力して、材料の課題の解決に取り組んでいる。IntermolecularでCTO(最高技術責任者)を務めるKarl Littau氏は、PCMの製造技術の微細化は3D NANDフラッシュほど進んでいないと述べる。PCMでは一つ一つ、層を積み重ねていく必要があるからだ。4層のPCMは2層のPCMに比べて2倍のコストが掛かるため、Optaneメモリが市場に投入されている今、どの次世代不揮発メモリが勝利するかは、まだ明らかではないと、Littau氏は述べる。「128層のPCMなど製造できない。そうなると、既存のメモリ技術に対するコスト競争力を持たせることは難しい」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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