半導体業界への巨額投資は中国の自信を高めた:第2次投資が始まる中国(1/3 ページ)
中国は常々、「国内の半導体業界とサプライチェーンを確立し、米国への依存を減らしたい」とする熱意を表明しており、それに関するさまざまな情報がひっきりなしに流れている。しかし中国は、このような目的を実現する上で、正しい方向に向かっているのだろうか。
中国Big Fundの成果
中国は常々、「国内の半導体業界とサプライチェーンを確立し、米国への依存を減らしたい」とする熱意を表明しており、それに関するさまざまな情報がひっきりなしに流れている。しかし中国は、このような目的を実現する上で、正しい方向に向かっているのだろうか。
筆者は、2019年11月に中国を訪れた時、エレクトロニクス業界の国内外メーカーの経営幹部やアナリストたちに疑問を投げかけてみた。
誰もが、「中国のBig Fund(中国の国家IC産業投資基金)は、期待通りの成果を生み出すことができる」と確信している中、フランスの市場調査会社Yole Développementのプレジデント兼CEOであるJean-Christophe Eloy氏は、そうとは断言できないと考えているようだ。
筆者は、2019年11月7日に中国・深センで開催された「Global CEO Summit 2019」において、Eloy氏にインタビューを行った。同氏は、「もし自分が中国政府の関係者だとしたら、中国エレクトロニクス業界に対してどのようなアドバイスをしたいか」とする筆者の質問に対し、「Big Fundは現在、中国が目標を達成するための手段と見なされているが、政府としては、エレクトロニクス業界における自給自足率を迅速に高める上で、垂直統合型モデルの実現も追求していくべきではないだろうか」と述べている。
さらに同氏は、「例えば、BYDやHuaweiについて見てみると、垂直統合型モデルは、市場ニーズとサプライチェーンの間をいくつも層を挟まずに短くつなぐことが可能な、優れた方法であるため、現在の中国にとって非常に重要なモデルだといえる」と述べる。
「中国最大手の自動車メーカーであるBYDは、電気自動車に必要とされる部品や技術の開発に取り組んでいる。電気自動車は、電池やインバーター、パワーデバイス、SiC(炭化ケイ素)から、パッケージング/インテグレーション技術に至るまで、あらゆるものを必要とする。このような重要な技術は、半導体の対応範囲を超えている」(同氏)
また同氏は、「このようなビルディングブロックは、電気自動車だけでなく、風力などのさまざまなエネルギー源で使われている新しいエネルギー管理システムにとっても、同じように非常に重要だ。現在こうした分野で優位性を確立しているのは、ドイツと日本である。中国は、垂直統合型に移行することにより、これらの垂直統合型の外側で役立つ技術を開発できるようになるだろう」と説明する。
Eloy氏は、「Huaweiと、同社が必要としている技術に関しても、同様のことが言える。例えば、RFフロントエンドモジュールは、基地局や5G(第5世代移動通信)スマートフォンなどのさまざまなワイヤレスアプリケーションにとって、非常に重要である。Huaweiは、RFフロントエンドモジュールの開発に取り組むことにより、『必要とされる技術や設計、IPなどを開発するための取り組みを求めているのは、どの分野なのか』について熟考する機会を生み出すことができる。中国において、全体的な統合型モジュールシステムを開発することは可能だ」と述べている。
Eloy氏は、「Big Fundは、中国がメモリやマイクロプロセッサなどの基本的な半導体デバイスを開発していく上で、重要な役割を担っている。しかし、全てには対応しきれない。エレクトロニクス業界は、他にもさまざまなものを必要とするため、中国は最先端技術の開発を目指すべきだ」と指摘する。
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