半導体業界はぜひ信頼性を高める努力を ―― 5Gオペレーターからの提言:ソフトバンク CNO 佃英幸氏インタビュー(3/3 ページ)
2019年12月11日に開幕する展示会「SEMICON Japan 2019」で、ソフトバンクで最高ネットワーク責任者(以下、CNO)を務める佃英幸氏が講演を行う。半導体業界関係者らが多く来場する展示会で佃氏は何を語るのか――。佃氏にインタビューした。
世界のトップになることは十分可能
EETJ 5Gについては、既に米国、韓国で商用サービスがスタートしており、日本の遅れを心配する声もあります。
佃氏 米国や韓国の状況は常に調査していますが、まだまだ応用用途はスマートフォンやAR/VR程度であり、5G本来の特長を生かしたサービスは出てきていません。5Gを産業の中でAIやIoTといった技術と組み合わせて使い、社会変革を行うという意味で、日本のオペレーターが世界のトップになることは十分可能な位置にいると思っています。
そうした社会変革を実現するための要素技術は、日本がたくさん持っています。メモリこそあまり元気がありませんが、カメラデバイスだったり、制御アンプだったり、多くの要素技術を持つ日本企業が多くいらっしゃる点は優位だと思っています。ぜひ、そうした要素技術を持つ企業にも「システムの信頼性を引き上げること」の重要性を認識してもらい、取り組んでほしいと願っています。
各企業それぞれが取り組むだけではなく、各企業が一緒になって、デバイス/技術を組み合わせたときに、システムトータルでの信頼性をどう上げていくかという業界を超えた一丸となった取り組みも進めてほしいです。
例えば、自動運転車を実現する際に、配線コネクターが万が一はずれてしまったらどうするか、などあまり、目立たない、細かな部分も含めて、考えていくことが必要でしょう。完全なフォールトトレラント(障害許容設計)を作るのは難しいですが、場合によっては、冗長度を上げて、止まっても全体が止まったように見えなくするようにしたり、情報のリルーティングすることで他のモノが代替したり、といった仕組みが必要になるでしょう。そして、いろいろな手法でシステムのアベイラビリティを引き上げるということはデバイスレベルから実施してもらいたいと思います。5G、IoTの時代は、これまでの4G、スマホの時代とは大きくことなり、故障や通信障害が生命を脅かす場面があることを想定されたので、システムの信頼性を高めるというテーマはもっと深掘りして取り組んでいかなければならないと思っています。
ぜひ、産業ごとにリードを
EETJ システムトータルでの信頼性を高めるために、誰がイニシアチブを発揮すべきだとお考えですか。
佃氏 われわれオペレーターも、通信が途切れないように努力しますが、妨害波の発生なども起こり得る状況で、全てを保証することは不可能です。既に、自動車メーカーなどでは多角的な取り組みは始まっていますが、ぜひ、産業ごとに、どのようにシステムに自律機能を持たせるかを考え、それぞれでリードしてほしいと考えます。
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