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光トランシーバーのForm Factor動向光伝送技術を知る(8) 光トランシーバー徹底解説(2)(3/4 ページ)

今回は、光トランシーバーのForm Factorについて、その変遷を解説する。

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10Gに見るMSAの動向

 10Gで花開いたMSAであるが、その先進性から変遷も激しかった。図3に代表的なMSAを示す。また、10G MSAの特徴や動向は、現在でも参考になるのでここで紹介しておきたい。


図3:代表的な10G MSAトランシーバー (クリックで拡大)

(1)z-Pluggableとx-Pluggable

 300-pin MSAはPCB内部にコネクターをはんだ付けし、光トランシーバーをPCBに垂直(z方向)に挿入する。この方式のメリットは、コネクター挿入のエリアさえ確保できればサイズを自由に設定できることだ。長距離から短距離まで応用できることと、消費電力の低減でサイズ削減が予測されていたので採用された。さらに、PCB上のどこにでも置くことができるので設計の自由度が高い。デメリットは、PCBを抜かないと光トランシーバーが交換できないことである。

 それ以外のForm FactorはPCBの端辺にコネクターをはんだ付けし、光トランシーバーをPCBに水平(x方向)に挿入する。一般的に「Pluggable」とだけ言った場合は「x-Pluggable」を指す。x-Pluggableのメリットは、PCBを抜くことなく光トランシーバーを挿抜できることである。デメリットはPCB中心近辺のICまでの配線が長いことだ。配置の自由度も少ない。

 それぞれのメリット、デメリットを考慮して、光デバイス、IC技術、消費電力などでシステム設計に最適な方式が採用されていく。なお、現在はx-Pluggableが主流となっている。


図4:z-Pluggableとx-Pluggable光トランシーバー (クリックで拡大)

(2)テレコムとデータコム

 高速信号を見ると、データだけのMSAと、データ+クロックのMSAが存在する。300-pin MSAとXFP(=small form factor pluggable)にはクロック(CLK)がある。これは、テレコムシステムへの応用に必要だからである。300-pin MSAやXFPはテレコムからデータコムまでカバーするという基本方針で規格化されたという背景があるので、クロックも含めたMSAがあるのだ。

 回線通信を主とした当時のSDH/SONETシステムでは、全ての局は一つのクロックに同期されていた。このため、データはシステムクロックで入出力する。受信部ではCDR(Clock Data Recovery)回路をトランシーバーに内蔵し、FIFOによりシステムクロックに同期して出力された。

 一方、データコムではクロック抽出はスイッチなどのデータ処理ICに内蔵化されている。これは、データコムではパケット通信でありポイント・ツー・ポイント通信が主だからである。データコムでは電気ケーブルのインタフェースがあり、データ処理ICにケーブル信号と光モジュール信号を両方処理できるCDR回路を内蔵している。この分野では、小型化が要求され、その時の技術でできる最小サイズのForm FactorのMSAが作られる。

 ある伝送スピードの光インタフェースに注目するとその適用領域が移っていくことが分かる。最初はテレコム応用から始まり、それに接続されるIPルーター、データセンター内、モバイルネットワークという具合である。これは、ファイバー網など設備に膨大な投資が必要なテレコムでは伝送スピードを速くすることでコストを下げられるため、競い合ってスピードを向上してきたという背景があるからだ。

 光トランシーバーも、多少大型で消費電力が大きくても、早く導入することが重要なのだ。また、数量も少なく、高価でも許されるところがあるので、先端技術を導入すべきだろう。技術が進化し低価格化、低消費電力化に従って適用領域が移っていくのである。

 このため、最初にテレコムにも適用できるForm Factorが作られる。その後、百万個規模の需要があるデータセンターやモバイルネットワークに向けた小型のForm Factorが提案されていくのである。

(3)高速電気データ信号数

 図3にあるように10G光トランシーバーの電気データ信号(Lane)は16送受(600M×16 Lane)、4送受(2.5G×4 Lane)、1送受(10G×1 Lane)と信号数を減らしながら小型化されている。トータルデータ速度は同じなので信号数が少ないほど高速である。これは、トランシーバー内蔵ICとそれに接続するデータ処理IC、PCBの配線技術の発展によるところが大きい。

 もちろん、それに沿って信号数に関連してIEEE802.3やFibre Channelでデータインタフェースやプロトコル、速度に関連してOIFやIEEE802.3で電気特性が規格化が行われる。

 高速電気データ信号数は次項で述べるサイズに大きな制限を与える。Pluggableでは挿入するコネクターのサイズで横幅が決まるからである。このため、信号の高速化を実現し、信号数を減らす努力が行われている。

(4)サイズと消費電力

 図3にはトランシーバーの上部から見たサイズを示してある。300-pin MSAの最大サイズである5インチ角からSFP+まで、サイズは20分の1程度に小さくなっている。

 300-pin MSAはいわゆるz-PluggableでOBO(On Board Optics)あるいはMBO(Mid-Board Optics)と呼ばれるPCB内にコネクターを垂直方向に挿入するタイプなのでサイズは最大サイズ以下であればサプライヤーが決められた。

 サイズは消費電力に比例している。図5は代表的な10G Form Factorの上面積と消費電力をプロットしたものである。規格の最大電力と、300-pin MSAの製品の消費電力を示した。このようにサイズは消費電力にほぼ比例している。トランシーバーの冷却は上面のヒートシンクで決まるためである。1W/(inch)2が一つの目安になっている。


図5:10G光トランシーバーの消費電力とサイズの関係 (クリックで拡大)

 消費電力低減には広温度範囲のDFBレーザーなど先端光デバイスの進展も大きかったが、最も大きな寄与はICであった。特にSiGeからCMOSへの移行が大きな変化をもたらした。2000年にはCMOSで10G動作させるのは学会レベルで発表されていたが300-pin MSAがその製品化を一気に推し進めた。300-pin MSAの発表の直後に10G CMOS SERDESの実用化に向けての会合があったのをはっきり記憶している。

 先に述べたように高速データ信号の数もサイズ、特に横幅を決定する。トランシーバーの出力回路の消費電力も大きいため、高速電気信号の数の低減も同時に消費電力低減に寄与する。

(5)モニター・アラーム・制御・管理用シリアルインタフェース

 トランシーバーを搭載した装置設計者にとって悩ましいのがMSAによってモニター・アラーム・制御ピンが異なる事である。300-pin MSAのようにピン数が多ければ、さまざまなサポートをするピンを定義できるが、横幅がピン数で決定されるPluggableでは、ピン数を削減するためにどの機能ピンを残すかが問題となる。ピンを低減した場合はシリアルインタフェースでソフト的な処理となるため、反応時間が問題となる。

 光トランシーバーではモニター/アラーム/制御をソフト的な処理を行ったり、製品情報などを収納したりする管理を、シリアルインタフェースでホストとやりとりして行う。しかし、シリアルインタフェース自身もMSAで異なるので注意が必要だ。現在はできるだけ従来のシリアルインタフェースを維持し、追加することで対処しようとしているが、それでも数種類ある。

(6)メジャーになれなかったMSA

 図3には載っていないMSAも存在した。図3で示しているX2とXPAKも、数量は大きく膨らまなかった。その原因はいくつかあると考えている。

 例えば200-pin MSAは、300-pin MSAと同時期に創設された。これは、名称から分かるように類似のForm Factorだがコネクターのピン数が少なく小型のForm Factorであった。最大サイズが約3インチ×1.6インチで、後に発表されるX2 MSAと同等である。発表当時の技術では全ての距離のインタフェースを実現するのは困難であった。このMSAのメンバーは300-pinに合流し、200-pinは消滅した。MSAは発表後1年程度で仕様を公開するが、その後速やかに製品サンプルが出荷されないとMSAの維持は困難と考えている。

 X2とXPAKはXENPAKの小型版として登場したが、4送受信号でコネクターはXENPAKと同じであり、長さが短くなった。しかし、長さが短くなって電気コネクターの位置を動かし、PCBの再設計を行うほどのメリットがなく、新規設計のみに使用され数量が伸びなかった。また、4 Laneから1 Lane電気インタフェースへの期待が高まっていたことも影響した。このように、MSAの規模はその当時のメリットに依存するので見極めが必要である。

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