光トランシーバーのForm Factor動向:光伝送技術を知る(8) 光トランシーバー徹底解説(2)(4/4 ページ)
今回は、光トランシーバーのForm Factorについて、その変遷を解説する。
100G以上のForm Factor
図6は、本連載の前回「「光トランシーバー」は光伝送技術の凝縮」の図4について、100Gから400GのForm Factorに高速データ信号数を加筆したものである(なお、CXP(12x10G)は他と用途が異なり、CPAKはMSAではないので原図から削除した)。10Gと同様の動向で、高速電気信号数を減らし、幅を狭くし、小型化を図っている。
図7に100/400G光トランシーバーMSA仕様の消費電力とサイズとの関係を示す。100G、400Gとデータ容量が増えるにつれ、同じ面積で消費電力が増加している。速度増加に伴う消費電力増加を放熱の改善により可能にしている。
筆者は100/400GのForm Factorはまだ収束していると考えていない。図6から100Gと400Gという伝送スピードというより4 LaneのQSFPと8 LaneのQSFP-DDを目指したLane数のForm Factorの傾向ともいえる。現在OIFで112Gの電気インタフェースの標準化が進められている。これを用いれば、1 Laneの100G SFP、4 Laneの400G QSFPへの移行が可能である。それらが図6でどこにプロットされるのかが興味持たれる。
Form Factor今後の展開
今後のForm Factorは大きな変化が予想されている。電気配線の限界が予測されているからだ。PCB上の高速配線距離とICの入出力ピンの限界問題である。
Pluggableトランシーバーはメインテナンスなどの利便性があるが、PCBの一辺に配置される。現在例えば標準の19インチ(約480mm)幅のラックでは400GのOSFPあるいはQSFP-DDを最大36個並べることができる。トランシーバー電気インタフェースは8 Laneであり、Lane当たりの電気信号は50Gで、OIFの「CEI-56G-VSR-PAM4」という規格が使用されている。その接続距離は伝送損失で決まるが、100〜150mmである。中央から200mm以上離れた両端のトランシーバーが、PCB中にあるスイッチICに接続するには不十分だ。このため、PCB上で再生中継することになる。
さらなる高速化に対しては電気高速信号の距離が短くなるので対策必要である。PCB配線の高周波特性の改善へのチャレンジが行われているが経済性とのトレードオフになっている。
このため、スイッチICから高速伝送できる近くに光トランシーバーを置き、ラックのパネルまで光ファイバーで配線するという方式が考えられる。これは300-pin MSAと同じOn-Board Optics(OBO)とかMid-Board Optics(MBO)である。この方式を取り入れたCOBO(Consortium for On-Board Optics)というコンソーシアムがMicrosoft主導で結成された。OBOの課題は故障時のPCB内部にあるトランシーバーの交換方法だ。また、PCB上のファイバーケーブルの配線にも注意が必要だ。
さらに、今後の問題はICの高速信号ピンの問題である。将来の51.2Tのスイッチが予測されているが、100Gの電気配線を仮定した時、送受で1024本の高速信号が必要である。このような高速信号をICからPCBに配線できるかという問題を生じる。そこで、Co-Packageという実装が検討されている。ICパッケージに光トランシーバーを搭載する。この実装の主な技術課題はトランシーバーが加わることによる放熱と故障時の光トランシーバーの交換方式である。また、光ファイバーの取り扱いも課題である。
PluggableのSFP+が2009年に主流になって約10年。時代が新しい技術を欲しがっている。はんだ付けを含め、OBOは1990年代の技術でもあり振り子が戻るかもしれない。筆者が12ch SMF並列伝送モジュールの量産化を進める中で、OBO PluggableやCo-Packageの議論をしていたころを懐かしく思い出している。
次回は具体的なForm Factorの規格や内容を紹介したい。
筆者プロフィール
高井 厚志(たかい あつし)
30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。
日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。
さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。
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