SoitecとApplied、次世代SiC基板で共同開発へ:「Smart Cut」技術などを生かす
高性能半導体材料の生成と製造を手掛けるフランスのSoitecと米国の半導体製造装置ベンダーであるApplied Materialsは2019年11月18日(フランス時間)、電気自動車や通信、産業機器などに対する需要の高まりを受け、パワーデバイス向けに次世代SiC基板の共同開発プログラムを実施すると発表した。
高性能半導体材料の生成と製造を手掛けるフランスのSoitecと米国の半導体製造装置ベンダーであるApplied Materialsは2019年11月18日(フランス時間)、電気自動車や通信、産業機器などに対する需要の高まりを受け、パワーデバイス向けに次世代SiC基板の共同開発プログラムを実施すると発表した。同プログラムは、次世代のエレクトロモビリティ(e-モビリティ)向けSiCデバイスの性能と可用性を向上させる技術と製品を提供することを目的としている。
Applied Materialsで新市場およびアライアンス担当シニアバイスプレジデントを務めるSteve Ghanayem氏は、「Soitecと緊密に連携して、材料工学的な観点からSiC技術のイノベーションの創出を目指したい」と述べている。
パワーデバイスを行う機器メーカーは当然ながら、最も効率的な製品を入手したいと考えている。シリコンの代わりにSiCやIII-V族半導体を使用すれば、効率を向上できる。SiCは電力損失を大幅に低減し、発熱を抑えながら、電力密度と電圧、温度、周波数を高められる。また、シリコンに比べてバンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍優れているという特長を持つ。
SoitecのCompound Business Unitでゼネラルマネジャーを務めるOlivier Bonnin氏は、「高電圧SiCデバイスは、高速スイッチングと低電力損失という魅力的な組み合わせを実現し、アプリケーションユーザーに中電圧および高電圧電力変換のトポロジー選択においてこれまでにない柔軟性を提供する」と述べている。
ただし、SiC基板に即座に移行できない要因もある。
Bonnin氏は、「歩留まり(欠陥密度の低さ)と信頼性を高めるには、より高品質なSiC材料が必要だ。また、ファウンドリでの量産に対応し、処理コストを削減するには、ウエハーの平面性の改善が必要だ」と述べている。
e-モビリティの未来は、半導体材料や基板レベルの技術革新がベースになる。SiCベースの半導体材料の需要は、過去1年で増加している。
Bonnin氏は、フランスの調査会社であるYole Développementの統計を引用して、「SiCパワーデバイス市場は年平均成長率(CAGR)28%で伸び、現在の5億6000万米ドルから2024年には20億米ドル規模に成長する見通しだ。SiCは今後10年間で、最も選ばれる材料になると予想される」と述べている。
Soitecの「Smart Cut」技術
SoitecはApplied Materialsとの技術開発プログラムで、2020年後半に同社独自の「Smart Cut」技術をベースとするSiCエンジニアリング基板のサンプルを作製することを目指しているという。Smart Cut技術は現在、半導体メーカーが広く採用するSOI(Silicon on Insulator)製品の製造に使用されている。
Bonnin氏は、「Soitecの技術は、最高クラスの品質を持つSiC材料の層を特定の基板に移す際の課題を解決する。同時に、SiC材料のリサイクルも実現する」と説明する。
Smart Cutは、ウエハーボンディングおよびレイヤー分割の技術で、1枚の高品質SiCウエハーから複数枚の高品質SiCウエハーを生産する方法である。具体的には、高品質のドナー基板から、極めて薄い結晶材料の層を切り出し、それをより低コストで低品質のウエハーと結合する。これにより、半導体デバイスを製造できるレベルの高い品質を備えた複数のウエハーを生産できる。Bonnin氏は、「当社のSmart Cut技術はSiCに適用可能だ」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- SiCの競争が激化、ウエハー供給不足は解消に向かう?
SiCパワー半導体には、引き続き高い関心が寄せられている。SiCウエハーの供給不足を懸念する声がある一方で、解消に向かっているとの見方もある。 - SiCパワーデバイスがモビリティの電動化を加速
今回は、電動化のキーデバイスである「パワーデバイス」に関してロードマップが記述した部分の概要をご紹介していく。 - ローム、4端子パッケージのSiC MOSFETを量産
ロームは、4端子パッケージを採用した耐圧650V/1200VのSiC(炭化ケイ素) MOSFET「SCT3xxx xR」シリーズとして6機種を開発、量産を始めた。従来の3端子製品に比べて、スイッチング損失を35%も削減できるという。 - 逆風でも堅調、カスタマイズ強化し日本で急成長続ける
省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとして、近年注目を集めるパワー半導体。次世代素材の開発など競争が激化する中、主要メーカーはいかに戦っていくのか。今回は、パワー半導体を主力とし世界トップクラスのシェアを誇る独Infineon Technologiesの日本法人インフィニオン テクノロジーズ ジャパンにおいて産業機器分野などを中心に事業を統括するインダストリアルパワーコントロール(IPC)事業本部の本部長、針田靖久氏に話を聞いた。 - 三菱電機、SiCパワー半導体製品を用途別に提案
三菱電機は、「TECHNO-FRONTIER 2019(テクノフロンティア)」で、パワーエレクトロニクス機器の省エネ化につながる、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体/モジュール製品を一堂に展示した。