MediaTek、ノートPC向け5GモデムでIntelと協業:5G SoC「Dimensity 1000」を発表(1/2 ページ)
MediaTekは、新しい製品シリーズとして、スマートフォン向け5G対応チップ「Dimensity 1000」を発表した。さらに、Intelとの間で業務提携を結び、ノートPC向けに5Gモデムを提供していく予定であることを明らかにした。
デュアル5G SIMに対応した5G SoC
MediaTekは、新しい製品シリーズとして、スマートフォン向け5G対応チップ「Dimensity 1000」を発表した。さらに、Intelとの間で業務提携を結び、ノートPC向けに5Gモデムを提供していく予定であることを明らかにした。
Dimensityは、高性能スマートフォン向けにコネクティビティやマルチメディア、AI、イメージングなどの機能を提供する製品シリーズだ。
Dimensity 1000は、MediaTekの5Gチップセットシリーズの最初の製品となる。同社にとって、この5Gモデムを搭載したチップは、HuaweiやQualcommが提供している類似製品と競合することが可能な、初めての7nm製品となる。Dimensity 1000が市場に登場するのは、2019年末ごろになる見込みだ。
MediaTekのチップは、5G対応2CC CA(2波キャリアアグリゲーション)をサポートし、「業界で初めて」(同社)デュアル5G SIMの技術(どちらのSIMでも5Gをサポートする技術)を適用しているという。同社は、「Dimensity 1000は、サブ6GHz帯のネットワーク上で、ダウンリンクのスループットが4.7Gbps、アップリンクが2.5Gbpsという世界最速の通信速度を達成した。また、最新のWi-Fi 6およびBluetooth 5.1+をサポートし、高性能なローカル無線接続を確立する他、ダウンリンク/アップリンク速度の両方で1Gbpsを超えるスループットを提供することができる」と説明する。
同社のプレジデントであるJoe Chen氏は、報道向け発表資料の中で、「Dimensityシリーズは、MediaTekがこれまで5Gに投資してきたことの集大成だといえる。これにより当社は、5Gの開発とイノベーションを推進していくリーダーとしての役割を担っていくことになるだろう。当社の5G技術は、業界のあらゆる企業に対して、正面から挑戦することができる」と述べている。
同社によると、Dimensityは、動作周波数が最大2.6GHzのArmコア「Cortex-A77」を4個と、最大動作周波数2GHzの「Cortex-A55」コア4個を組み合わせることにより、最高レベルの性能と電力効率を実現する最適なバランスを確立しているという。また、Armのモバイル向けGPU「Mali-G77」も搭載し、5G速度でのストリーミングやゲーミングを提供することも可能だ。
またDimensity 1000は、MediaTekの新しいAPU(AI Processing Unit)3.0を搭載し、旧世代APUの2倍を超える性能を実現するという。初期のベンチマークスコアでは、AI(人工知能)性能のベンチマークであるETH Zurich Benchmarkで5万5828を達成している。SA(スタンドアロン)とNSA(非スタンドアロン)の両方のサブ6GHzネットワークをサポートし、2G(第2世代移動通信)から5G(第5世代移動通信)までの全てのセルラー接続世代に対応可能なマルチモードサポートを提供する。
MediaTekによると、Dimensityが搭載する5Gモデムは、競合他社のソリューションと比べて電力効率が高いという。コンパクトな集積回路設計を採用しているため、スマートフォンメーカーは、バッテリーやカメラセンサーなどの他の機能のためのスペースを多く確保することが可能だ。
米国の市場調査会社Tirias Researchの主席アナリストを務めるJim McGregor氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「それでもMediaTekは、5G市場のライバル企業に対する後れを取り戻そうと躍起になっている。同社は確かにわずかな後れを取っているが、Appleに対しては一歩リードしている」と述べている。
さらに、「MediaTekのチップはミリ波をサポートしていないが、これは中国をはじめ、現在もまだミリ波戦略に取り組んでいる国にとって、好都合だといえる。しかし、米国などのように、さまざまな通信事業者がミリ波ソリューションを発表している地域では、あまり競争力を発揮することはできないだろう」と指摘した。
同氏は、「MediaTekは最初に、中国のスマートフォン市場向けチップをターゲットに定める予定だが、既にQualcommやHiSiliconとの競争に直面している。近々、Unisoc(Spreadtrum CommunicationsとRDAの合併企業)がその後に続くだろう。HiSiliconは、親会社であるHuaweiの他にも、携帯機器メーカーにモデムを提供していきたい考えだ」と指摘する。
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