「Mate 30 Pro」でHuaweiが見せた意地? 米国製チップの採用が激減:製品分解で探るアジアの新トレンド(44)(2/4 ページ)
今回は、Huaweiのフラグシップモデル「Mate 20 Pro」「Mate 30 Pro」を取り上げる。この2機種を分解して比較すると、米国製半導体の採用が大幅に異なっていることが分かる。最新のMate 30 Proでは、極端に減っているのだ。
4眼カメラを搭載する「Huawei Mate 30 Pro」
図3は、米中問題が白熱した2019年の後半にHuaweiから発売された最上位スマートフォン「Mate 30 Pro」だ。名前の通り、2018年のフラグシップMate 20 Proの後継機種である。
図3は、図1と同じく、外観、裏パネル取り外し、基板、カメラの様子である。カメラは4眼へと数を増やしている。ここでは詳細を記載しないがフロントカメラも1眼から3眼となった。4眼カメラは、今や中国製のハイエンド機ではほとんどのメーカーが採用している。韓国のSamsung Electronics(以下、Samsung)も、日本未発売の「Galaxy S10 5G」や「Galaxy Note10 5G」では4眼カメラを搭載する。既に、4眼が2019年に発売されたハイエンド機種の主流となっているのだ。
4眼カメラを搭載したHuaweiのスマートフォンは、Mate 30 Proが最初ではなく、2019年前半に発売された「P30 Pro」からだ。いずれにしても、2019年のスマートフォンはリアカメラ4基、フロント3基などを備えた高度な画像処理、空間認識ができるものになっている。
図4はMate 30 Proの図2と同じく内部のチップの一部である(詳細は、有償のテカナリエレポート260号Mate20 Pro および354号Mate30 Proに掲載されている)
結論から言えば、米国製半導体はほぼ使われていない。機能チップとしてはわずかに3個。一つはパネル用のタッチコントローラーで、米Synaptics製が用いられている。もう一つが、シリアル通信用のブリッジチップ2個。こちらは米Texas Instruments(以下、TI)製だ。わずかにこれだけである。
ベースバンドとアプリケーションを1チップ化した「KIRIN990」
図4の左側は、HiSiliconの最新プロセッサ「KIRIN990」である。KIRIN990は、第2世代の7nmプロセスを用い、5Gベースバンドとアプリケーションプロセッサを、世界で初めて統合して1チップ化したものである。QualcommやSamsungらも2020年には同様のチップをリリースすることは間違いないが、KIRIN990は、2019年後半に製品化されたという点で、ひと足早いものとなっている。
HiSiliconが通信プロセッサで世界に先駆けてリリースした事例は過去複数回あるが、特に5Gのような象徴的チップで、競合よりも1年近く早い時期に、1チップ化したものを商用化にこぎつけたことは、HiSiliconの高い開発力を示している。
アナログチップもそろえたチップセット
KIRIN990はKIRIN980と同じく、アナログチップなども複数そろえたチップセットである。しかし大きく異なる点がある。通信用パワーアンプもチップセットに加えてきたことだ。従来は、Skyworksや米Qorvo、米Broadcomや日本の村田製作所製のパワーアンプを用いていたが、Mate 30 Proでは自社製のチップセットに置き換えている。同様の流れは、Qualcommチップセットでも劇的に進んでいる。こうしたチップセット領域の拡大によって米国チップの使用比率がさがったわけだ。ではSynapticsやTIのチップは置き換えできないものなのか?
ディスプレイのタッチコントローラーでは確かにSynapticsは実績もシェアも大きい。しかし、多くの半導体メーカーもタッチコントロール製品を用意しており、置き換えは可能である。事実、Huaweiの最初の5Gスマートフォン「Mate 20 X (5G)」(日本では未発売)では、タッチコントローラーに中国GOODIXのチップが用いられている。
Huaweiは指紋認証やタッチコントローラーにGOODIX製を用いるケースも多いので、置き換えは可能と思われる。TIのシリアルブリッジも、他メーカー製のシリアル関連チップは多々あるので置き換えは可能だろう。仮に上記のように3チップを置き換えた場合、Mate 30 Proでは、米国製の機能半導体は“ゼロ”ということになる。
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