「Mate 30 Pro」でHuaweiが見せた意地? 米国製チップの採用が激減:製品分解で探るアジアの新トレンド(44)(3/4 ページ)
今回は、Huaweiのフラグシップモデル「Mate 20 Pro」「Mate 30 Pro」を取り上げる。この2機種を分解して比較すると、米国製半導体の採用が大幅に異なっていることが分かる。最新のMate 30 Proでは、極端に減っているのだ。
米国製チップが激減した
図5は、2018年発売のMate 20 Proと2019年発売のMate 30 Proについて、内部の機能半導体を国籍別に分け、そのうち米国製の比率をクローズアップしたものである。
Mate 20 Proでは約43%あった米国製が、Mate 30 Proでは7%、36ポイントも比率を下げている。米中問題に端を発した結果とも見えなくはない。HiSiliconのチップセットのカバー領域がパワーアンプまで広がったことも一因ではあるが、米国製半導体の極端な比率低下には、Huaweiの強い意志を感じざるを得ない。
ローエンド機ならば米国チップ比率の低いものも多々あるが、Mateシリーズのようなハイエンド機では異例のことである。例えば、Appleの「iPhone」やSamsungの「Galaxy S」シリーズ、「Google Pixel」ではほぼ一定のサプライヤーで構成されており、大きな変化は起こっていない(本件はテカナリエレポートでは新機種が出る度にまとめているので、ぜひご覧いただきたい)
米中問題は解決しないまま2019年は暮れていく可能性が高い(執筆は12月3日)。今後こうした米国製の比率低下は、ハイエンド機で実現できたのであれば、ミドル機やローエンド機にも波及していく可能性も十分にあるだろう。2020年も多くの機器を分解し変化を確認していく予定である。
5Gへの本気度と実力を示したかった?
図6は、Mate 30 Proで採用されるHiSiliconの新プロセッサKIRIN990と従来のハイエンドプロセッサKIRIN980の様子である。ともに、ゲートまで観察できる写真を有償で用意している。新旧チップともに7nmで製造されるが、新チップは第2世代の7nmを用い、チップサイズと、Huaweiが公表している総トランジスタ数から計算すると、集積密度が実に約16%も上がっていることが分かる。高い集積密度を用い、周波数を上げる、コア数を増やすなど大幅な機能強化を実現している。
さらに言うならば、KIRIN990は先に述べたように、5Gベースバンド機能を1チップ化(アプリケーションと統合)したものになっているのだ。従来2チップであったものが1チップ化されることによって、大幅な部品の削減、基板エリアの節約が可能になっている。
5Gの商用化が海外では本格化した2019年、5GベースバンドチップをリリースできているメーカーはQualcomm、Samsung、HiSiliconの3社だけだが、いずれも2チップ構成であった。KIRIN990の登場によって1チップ化が始まったわけだ。5Gの本格普及が始まる2020年以降は、コストと実装面積の点から1チップ化は必須だが、KIRIN990により、2020年を待たずに1チップ化の商用リリースが始まったことは2019年を象徴する出来事と言っていいだろう。
では、なぜHuaweiが、例年ならば年末にリリースするMateシリーズを数カ月前倒して発売したのだろうか。
これは、まさに5Gに対する本気度と、実力を示すためだったのではなかろうか!
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