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2020年度内の国内利用開始目指す、IEEE 802.11ah実証実験結果や最新デバイスなど紹介(1/2 ページ)

920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah(以下、802.11ah)」の国内利用実現に向けた活動を進める「802.11ah推進協議会」は2019年12月5日、都内で第2回総会を実施。発足から1年間の活動報告などを行った。同会は、2020年度内のIEEE 802.11ah国内利用開始を目指している。

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 920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah(以下、802.11ah)」の国内利用実現に向けた活動を進める「802.11ah推進協議会」は2019年12月5日、都内で第2回総会を実施。発足から1年間の活動報告などを行った。同会は、2020年度内のIEEE 802.11ah国内利用開始を目指すとしている。

 Wi-Fi HaLow(ヘイロー)と呼ばれる802.11ah規格は、伝送が1kmオーダーと現行のWi-Fiに比べて長いうえ、フルオープンでIP(Internet Protocol)ベースなので、端末からAP(アクセスポイント)、クラウドまでエンド・ツー・エンドでユーザーが自由にネットワークを構築可能。数メガビット/秒のスループットを出せる可能性もあるといい「革新的なIoT通信規格となる」と期待されている。

 スループットについては規格上は、1MHz帯域幅なら3.34Mビット/秒(bps)、4MHz帯域なら15.0Mbpsが可能。MIMOに対応していることから、規格上の最大値は347Mbps(16MHz帯域幅。アンテナ4本とした場合)だ。無線LANの10倍の遅延時間の遅延波に対応するほか、低消費電力化機能、中継伝送機能、パケット衝突防止機能などの特長も挙げられる。

1km以上を1台のアクセスポイントでカバー

 同会は、2019年5月、総務省からIEEE 802.11ahの実験試験局免許を取得。同月の「ワイヤレスジャパン2019」では早速、鳥獣被害対策のユースケースを想定したデモの展示を行っていた。

 同会が今回、日本初の「実環境を用いた屋外長距離伝搬実験」として紹介したのが、神奈川県横須賀市のYRP地区での802.11ah伝搬実験だ。富士通、横河電機、セコム、NTT東日本、NTT研究所が共同で実施したもので、YRP地区内に設置した送信端末の電波がどこまで伝搬できているかを計測したという。

 送信端末にはNEWRACOM製の評価用キット「NRC7292 EVK」を利用し、300kbpsでエンコードした動画を送信。複数の地点で計測を行ったところ、街路樹などで見通しが切れても問題なく、1.24km先の地点でも動画伝搬が可能なことが実証されたという。活動報告を行った運営委員の鷹取泰司氏は、「920MHz帯で、通常のLPWAではなかなか実現できない動画伝送が可能という特長を生かし、ユースケースを拡大していきたい」と話していた。

左=実験の測定ポイント一覧。左端の「AP(アクセスポイント)」が送信端末の場所だ/右=伝搬損失の想定値と実測値の比較図(クリックで拡大)
左=NEWRACOMのモジュールの特性評価の内容。規格上の最低受信感度-95dBmを上回る性能を示しているという/右=見通し環境での接続距離推定の内容。伝搬損失の上限想定した場合(実線)でも、2.3kmの距離での伝送が見込めるという(クリックで拡大)

 また、同会は新宿や横須賀中央、武蔵小杉、八王子、富山など各地で920MHz帯の利用状況も確認。Wi-SUNやLoRa、SIGFOXなどと推定される信号を検出したものの、利用時間を計測すると「おおむね1%以下のエリアが多く、空き周波数を見つけやすい状況だった」としている。鷹取氏は、「都市部、郊外、ルーラルエリアいずれの環境でも802.11ahの活用が期待できる状況にある」と語っていた。同会は、これらの既存システムや隣接周波数帯との共用の検討のほか、MCA跡地(930M〜940MHz、950M〜960MHz)の利用の提案を進めていく方針としている。

会場では実機を使った動画データ伝搬のデモも行われた(クリックで拡大)
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