「IEEE 802.11ah」の実証実験、日本で初公開:ワイヤレスジャパン2019
802.11ah推進協議会は、「ワイヤレスジャパン2019」で、920MHz帯の周波数を用いる新たなWi-Fi規格「IEEE 802.11ah」の公開実証実験を行った。
長距離通信と高速伝送を両立
802.11ah推進協議会は、「ワイヤレスジャパン2019」(2019年5月29〜31日、東京ビッグサイト)で、920MHz帯の周波数を用いる新たなWi-Fi規格「IEEE 802.11ah」の公開実証実験を行った。
Wi-Fi HaLow(ヘイロー)と呼ぶ802.11ah規格は、低消費電力で長距離通信と高速伝送を両立させており、IoT(モノのインターネット)に適した通信システムとして注目されている。Wi-Fi HaLowは伝送距離をキロメートルオーダーまで拡大した。従来のWi-Fiシステムに比べ極めて長く、より遠くまで信号の伝送を可能としたことで、山間部などでの活用も容易である。
また、数メガビット/秒のスループットを出すことも可能だ。920MHz帯を利用する他のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークに比べ、高いスループットを実現した。このため、温度や位置など比較的データ量の小さい情報に加え、精細度の高い画像や動画などの伝送が可能となった。
この他、フルオープンでIPベースのネットワークであり、対応するWi-Fiルーターをユーザーが設置すれば、容易にネットワークを構築できる。しかも、Wi-Fi HaLowは、802.11acを10分の1にクロックダウンをした仕様となっている。このため、ICチップの開発も比較的容易で、802.11acとのマルチモード仕様などにも柔軟に対応できるという。
802.11ah推進協議会はこのほど、総務省からWi-Fi HaLowによる実験試験局の免許を取得した。国内初となる免許交付を受け、展示ブースにおける公開実証実験を実施した。実証実験はWi-Fi HaLowの特長を分かりやすく説明するため、「鳥獣害対策」の事例を想定したデモを用意した。
山間部など遠隔地に設置された動物捕獲用のおりを、近くに取り付けたカメラで撮影。そのおりの中に入った動物の画像を、アクセスポイントやゲートウェイを介してクラウド側に送信する。この画像データはその後、端末側に送信しブース内のディスプレイ装置に表示した。これとは別に、30〜40m離れた場所にあるNTT東日本ブースにもディスプレイ装置を設置し、撮影した映像を送信して表示した。
従来のシステムだと、センサー信号により動物が捕獲されたことは遠隔地でも分かるが、その種類や大きさは現場で確認するしかなかった。ブースでは320×240画素(QVGA)のネットワークカメラで撮影したデータを送信。おりの中で動き回っていても捕獲された動物の種類や大きさは、送られてきた画像データから読み取ることができた。「おりの設置場所へ向かう前に、捕獲された動物の情報をより詳細に把握でき、効率的な対応が可能になる」(説明員)と話す。
ブースには、AdvanWISE製の「トライバンドIoTゲートウェイ(920MHz/2.4GHz/5GHz)」と「Wi-Fi HaLowアクセスポイント」、ビート・クラフト製の「802.11ah組み込み用モジュール」なども展示。これらの製品を用いてWi-Fi HaLowの実証実演を行った。
802.11ah推進協議会には現在、82の企業/団体が参加し、早期実用化に向けての技術検討や実証実験、普及促進活動に取り組んでいる。
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