28nm FD-SOI車載マイコンやSiCパワーデバイスを公開:オートモーティブワールド2020(1/2 ページ)
STMicroelectronics(以下、ST)は2020年1月15日から東京ビッグサイトで開催されている展示会「オートモーティブ ワールド」(会期:1月17日まで)で、新しい車載マイコン製品群「Stellarファミリ」やSiC(炭化ケイ素)を用いたパワーデバイス製品などを展示している。
STMicroelectronics(以下、ST)は2020年1月15日から東京ビッグサイトで開催されている展示会「オートモーティブ ワールド」(会期:1月17日まで)で、新しい車載マイコン製品群「Stellarファミリ」やSiC(炭化ケイ素)を用いたパワーデバイス製品などを展示している。
28nm FD-SOIプロセス、相変化メモリ採用の車載マイコン「Stellar」
STの新しい車載マイコン製品群であるStellarファミリは、28nm FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)プロセスを用いて製造する。既に、試作版サンプルを一部顧客向けに提供中で、2020年末に正式なサンプル品の提供を開始し2022年頃の量産出荷を予定している。
Stellarファミリは、ECU(電子制御ユニット)を処理内容に応じていくつかの技術領域(=ドメイン)に分類、整理した「ドメインアーキテクチャ」と呼ばれる新たな電子システム構造を用いた自動車に向けた車載マイコン製品群と位置付けられる。特に、ドメインアーキテクチャにおいて高いコンピューティング能力が要求される各ドメインのナットワーク処理などを行うドメインコントローラーや、パワートレイン系ECUといった用途に向けた製品を展開する予定だ。
大きな特長としては、車載マイコンでは最先端微細プロセスである“28nmプロセス”を採用し、高集積化、高性能化を実現している点にある。車載マイコンのプロセスを微細化する場合、搭載が必須になっているフラッシュメモリの微細化が困難であり、28nmプロセスによる車載マイコンの製品化は一部にとどまっている。そうした中でSTは、28nm世代のStellarファミリから、フラッシュメモリの搭載をやめ、代わりに相変化メモリ(PCM)を採用。PCMは、構造が単純で微細化しやすく、書き込みが高速といった特長を持つ。「28nm世代でのフラッシュメモリの混載は、長期信頼性、データ保持能力などの面でリスクが大きく、PCMが最適なメモリとして判断した」(同社説明員)という。Stellarファミリでは、このPCMを最大で40Mバイト搭載する。
CPUコアは、Arm Cortex-R52(最大6個)を採用し、最大動作周波数は400MHz。Powerアーキテクチャーベースだった従来の車載マイコン製品から、大幅に性能も向上している。その他、セキュリティレベル「EVITA Full」準拠のハードウェアセキュリティモジュール(HSM)や高速通信インタフェース(Ethernet、CAN-FD)など「次世代の自動車で要求される各種ペリフェラルを備えている点も特長」とした。
新コンセプトパワーモジュール「STPAK」
STブースでは、次世代電気自動車(EV)のトラクションインバーターに向けて、新しいコンセプトのパワーデバイスモジュール「STPAK」も展示。トラクションインバーターに向けては、従来、3相分のパワースイッチを構成したパワーモジュールが使用される。そうした中で、STPAKは、1つのパワースイッチと保護回路を搭載したディスクリートタイプのモジュールであり、一般的な3相インバーターを駆動するには、6個のSTPAKが必要になる。しかし、「従来のオールインワン型のパワーモジュールでは、選択できる電力容量は限られ、形状、サイズについては選択できなかった。STPAKは、必要な容量に最適化できるフレキシビリティを備え、サイズも小型化できる利点がある」という。他にも、チップ接合はハンダよりも導電性、信頼性に優れる焼結型接合材料を用いているなどの特長を備える。
既に、Si-IGBTやSi-MOSFETを搭載したSTPAKを量産出荷済み。さらに、SiC-MOSFETを搭載したSTPAKも開発中で「STPAKで、Si-IGBTに比べてチップサイズを5分の1に縮小できるSiCの利点を享受できる環境が今後1〜2年程度で整う」としている。
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