互換チップが次々と生まれる中国、半導体業界の新たな潮流:製品分解で探るアジアの新トレンド(45)(1/3 ページ)
中国では今、STMicroelectronicsのArmマイコン「STM32シリーズ」の互換チップなどが次々と開発されている。これが、中国半導体業界の新たな方向性の一つとなっている。
2019年は米中貿易摩擦の問題がエレクトロニクス業界にも大きな影響を及ぼした。政治に翻弄される状況はまだ続きそうだが、そんな中、中国の半導体がもう一つの進化の方向を持ち始めているので実例をもとに取り上げたい。こうした方向性は以前からもあるもので、特に2019年に顕著になったわけではないが、2020年を迎え、ますます加速する可能性があるので、あえて今、取り上げたい。
高度なドローンは半導体の塊
図1は、2019年に発売された中国DJIの新型ドローン「Mavic Mini」。軽量小型ながら高度な能力を持つ話題のドローンである。フライトボディーとワイヤレスコントローラーの2つがセットとなっている。ボディー側には駆動用モーター、制御用のコントローラチップとモーター駆動用のパワー半導体、カメラ側にはプロセッサと3軸ジンバルを制御するモーターコントローラが備わっている。モーターは駆動用4基、カメラ用3基の計7基。さらに、ワイヤレスコントローラーとの通信を行うWi-Fiチップという構成だ。ボディー側の機能を有する半導体チップ(含むパワー半導体)はトータルで33個。
高度なドローンは半導体の塊である。「33個」というのは、かなり大きな数字だ。同じ基準でカウントするとAppleの「iPhone11」は31個、Googleの「Pixel 4」は35個なので、ドローンも大量の半導体を活用する分野ということになる。
カメラプロセッサや制御コントローラは、スマートフォンにもドローンにも能力の差こそあれ共通に備わっている。ともにセンサーの塊なので、スマートフォンとドローンの差は、スマートフォンが通信用やオーディオ用のパワー半導体を大量に搭載すること、ドローンはモーター駆動用のパワー半導体を大量に使うこと、といった程度だろう。システム図を描くとどちらもほぼ同じになる。パワー系の行き先が違うだけだ。
図1右側のコントローラには、ボタンやスティックの動きをデジタル変換して処理するマイコンと通信用のチップが搭載されている。今回はコントローラー側のマイコンにフォーカスしよう。
STMicroelectronics「STM32シリーズ」の互換マイコン
図2は、コントローラー側のマイコンのパッケージのクローズアップとチップ開封の様子である。型名は伏せて掲載するが(有償のテカナリエレポートでは伏せ無し)中国■■社の「■■32F030」というマイコンが採用されている。
このマイコンチップは、ドローンのコントローラーだけでなく、いくつかの分野でも採用が進んでいるようだ。そもそもDJIと言えば中国を代表するメーカーの一つである。半導体に知見のある技術者は豊富におり、そのDJIの製品に採用されるという点で■■32F030は、基準を十分に満たしたマイコンと判断できるだろう。このマイコンはデーターシートや仕様も明確になっており、図2の右上に掲載するような機能を搭載している。
ズバリ言うと、■■32F030はSTMicroelectronicsの「STM32F030」との互換製品である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.