売上高3000億円達成が目前に迫った太陽誘電の2020年戦略:太陽誘電 社長 登坂正一氏インタビュー(1/4 ページ)
2020年度(2021年3月期)に売上高3000億円の達成を掲げる太陽誘電の登坂正一社長に事業戦略を聞いた。【訂正あり】
太陽誘電は、積層セラミックコンデンサー(以下、MLCC)を中心としたコンデンサー事業で、自動車/産業機器向けビジネスを拡大させるなどし、2020年3月期上期(2019年4〜9月)業績は、売上高1419億円(前年同期比6.2%増)、営業利益202億円(同38.1%増)と増収増益を達成。2021年3月期を最終年度とする中期経営計画で掲げる売上高3000億円、営業利益率15%という目標に向け着実に前進を続けている。
3カ年計画の仕上げの年となる2020年にどのように挑むのか、同社社長の登坂正一氏に聞いた。
自動車向け売上高比率が向上
EE Times Japan(以下、EETJ) 2020年3月期上期業績、2019年のビジネスを振り返っていただけますか。
登坂正一氏 2019年は、厳しい市況だったが、業績としては良かった。自動車向け、基地局などの情報インフラ向けの売上高比率が高まったことが(良い業績に)つながったと考えている。
EETJ 自動車向け売上高比率は2015年3月期の4%から2019年3月期には15%に伸長しました。自動車市場でビジネス規模を拡大できた要因はどのように考えられていますか。
登坂氏 自動車は電子化が進んでいる。例えば、これまでMLCCを使わなかったヘッドライトもLED化により、MLCCを必要にするアプリケーションになった。そうした電子化で生まれる新たなニーズと、太陽誘電のハイスペック、高信頼性を誇る製品が合致したことで、自動車向けビジネスを拡大することができた。
数年前まで太陽誘電は、自動車市場に参入してこなかった、あるいは、参入できなかったのかもしれないが、今、振り返ってみれば、元々、自動車向けに対応できる力がわれわれにはあったと思っている。自動車市場で求められる高電圧への対応など、製品力があったことが、ビジネス規模を拡大させる要因になった。
EETJ 今後も自動車向けビジネス比率をどの程度まで高める計画ですか。
登坂氏 引き続き、自動車向けの売上比率を高めていく。全社売上高の25%ぐらいが適正だと考えている。供給責任を果たしながら、生産の効率性なども考慮すると、自動車向けは25%程度にし、スマートフォンや民生機器向けなどとうまくバランスを取る必要性があると考えている。
2020年は「部品が足りる、足りないという状況になるだろう」
EETJ 2020年の市況はどのようになると予想されていますか。
登坂氏 基地局向け需要は引き続き好調を維持していくだろう。データセンターについても、2019年後半からの回復基調が続くとみている。
自動車については、生産台数、販売台数こそ減るだろうが、電子化に伴う電子部品搭載増は続き、市場規模自体は拡大を続ける。
また、2020年は5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンの製品化が本格化する。5G対応スマホがどの程度、消費者に受け入れられるかにもよるが、来期(=2021年3月期)は部品が足りる、足りないという状況になるだろう。
EETJ 5G対応により、スマートフォン1台当たりの部品点数はどの程度増えるとみられていますか。
登坂氏 4G対応端末でおおよそ800個だったMLCCの搭載数が5G対応で1000個くらいまで増えるとみている。インダクタもパワー系で約25個が約35個に増える。フィルターについても対応バンド数が増えるため、その分だけ搭載点数が増えることになる。
EETJ 生産能力拡充に向けた取り組みを教えてください。
登坂氏 生産能力については毎年、10〜15%分増強していく方針。その方針の下、2019年3月期から2021年3月期の3カ年では累計1500億円の設備投資を実施している。具体的にはMLCCの生産拠点である新潟太陽誘電で2019年3月に第3号棟の稼働を開始し、2020年4月には第4号棟が完成する予定だ。2021年3月期までの1500億円の投資により、2022年3月期〜2023年3月期の需要に対応できる生産能力が整うと見ている。
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