売上高3000億円達成が目前に迫った太陽誘電の2020年戦略:太陽誘電 社長 登坂正一氏インタビュー(2/4 ページ)
2020年度(2021年3月期)に売上高3000億円の達成を掲げる太陽誘電の登坂正一社長に事業戦略を聞いた。【訂正あり】
自動車、産業機器向け製品展開を強化
EETJ 2019年1月には、エルナーを完全子会社化されました。
登坂氏 子会社化に伴い、電圧50〜100V程度、容量10μF前後の自動車向けアルミ電解コンデンサーが製品ラインアップに加わった。
この電圧50〜100V程度、容量10μF前後のコンデンサーについては、マイルドハイブリッド自動車、48V化で需要が高まる領域であり、MLCCでも対応していくことは不可能ではないのだが、効率性を考えれば、当面の間はアルミ電解コンデンサーの方が、適している。タイミングよく、そのアルミ電解コンデンサーを提案でき、子会社化のシナジーの1つになっている。
他にも、エルナーは自動車向けは強い一方で、産業機器向けなどへの注力は弱かった。太陽誘電の販路を生かすことで、産業機器向けビジネスを拡大できるというシナジーもある。さらに子会社化する以前から製造で協業し、ドライブレコーダー用途などで高いシェアを獲得している電気二重層/リチウムイオンキャパシターについても、相乗効果をより発揮しやすい状況になった。
【お詫びと訂正】初出時、エルナーの取り扱い製品に関する記述に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2020年1月30日午後5時59分/編集部)
EETJ 2019年12月には、全固体電池の製品化を発表し、2022年3月期から量産開始する予定です。
登坂氏 全固体電池については、セラミックをベースに製造するため、大きな電池を作る予定はない。IoT機器についても、バックアップ用の電池を必要にしており、そこを全固体電池でサポートしていく予定だ。ただ、まだまだ具体的な用途が決まっているわけではなく、どういった仕様の全固体電池が求められるのか、探っている段階。求められる容量、信頼性をしっかりと見極め、バランスの良い仕様を探し出し、それに応じた材料開発、材料選択を行っていくことが重要になるだろう。
製造については、積層プロセスはMLCCとほぼ同じで、ニーズが見えてきて仕様が決まれば、製造自体はそこまで課題はない。
インダクター、フィルターでも5G、車、産機に期待
EETJ フェライト関連事業、フィルターなどの複合デバイス事業の状況について教えてください。
登坂氏 フェライト/インダクター、フィルターについても、コンデンサー同様、5Gの普及に伴い必要とされる数量は増えていくとみている。
フェライト事業については現状、フェライト事業といいながら、金属(メタル)系材料を使用したインダクター製品の売り上げの方が大きくなったところ。入れ替えが起こっている。今後も、金属系を増やして、事業拡大を狙っていく。
5Gになると、「小型/大電流」というニーズがより強くなる。そこに対しては金属系で唯一、積層タイプを実現している独自のインダクター「MCOIL」が「小型/大電流」というニーズに合致した製品であり、5Gにより急激に伸びていくことになる。
フェライト系インダクターについても、自動車用途、産業用途を伸ばしていく。
フィルター事業については、5G向け、ミリ波向けといった用途に対しセラミックフィルターが今後、増えてくる。セラミックはMLCCなどの技術活用が基盤にはなるが、5Gの時代になると、耐電力性が重要になってくる。そこで、太陽誘電のパッケージ技術は放熱性が高く、耐電力性に優れ、小型化しやすい技術であり、5Gとうまく結び付け、小型という特長でシェアをアップしたい。
太陽誘電のフィルターは、テレマティクスなどの用途で非常にシェアが高い。なぜなら信頼性が支持されているため。自動車のためのフィルターとしての拡大を目指したい。これまでは、民生が主体だったけれど、クルマ向けを増やし、フィルターでも、クルマの比率を多くしたい。
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