2020年は“ローラブルディスプレイ元年”に?:ディスプレイ産業フォーラム 2020(1/4 ページ)
市場調査会社であるIHS Markit(テクノロジー系の大部分をInfoma Techが買収し、現在移管中である)が2020年1月30〜31日に、東京都内で「第38回 ディスプレイ産業フォーラム 2020」を開催。今回は、FPDの新しい技術についてまとめる。
市場調査会社であるIHS Markit(テクノロジー系の大部分をInfoma Techが買収し、現在移管中である)が2020年1月30〜31日に、東京都内で「第38回 ディスプレイ産業フォーラム 2020」を開催。先行公開しているFPD(フラットパネルディスプレイ)業界の動向に続き、今回は、以下の講演を基にFPDの新しい技術についてまとめる。
講演タイトルおよびアナリスト
- 「マイクロLED&量子ドットFPD技術」:ディスプレイ部門シニアアナリスト Richard Son氏(韓国)
- 「OLED&フォルダブルFPD技術」:ディスプレイ部門アソシエイトディレクター Jerry Kang氏(韓国)
期待値が高いマイクロLEDディスプレイ
ディスプレイ部門 シニアアナリストのRichard Son氏は、マイクロLEDディスプレイと量子ドット(QD:Quantum Dot)ディスプレイについての技術動向を説明した。
Son氏によれば、マイクロLEDディスプレイは、小型、車載用照明という3つの分野での成長が期待できるという。マイクロLEDに対する関心は数年前から高まっており、マイクロLEDを使った可視化ソリューションを開発するプロジェクト「SmartVIZ」など興味深いプロジェクトも幾つか進んでいる。
LEDチップメーカーは、LED市場の成長率が低いことや、LEDの過剰生産に苦しんでいる。そのため、LED業界はマイクロLEDディスプレイへの期待値がひと際高いとSon氏は説明する。「マイクロLEDディスプレイは、セットメーカーに新しいビジネス機会をもたらす。今は、マイクロLEDディスプレイの価格の話よりも、こうした新しい技術に対する期待値を上げることに意味がある」(Son氏)
「EE Times Japan×EDN Japan統合電子版2月号」にて既報の通り、LCD(液晶ディスプレイ)事業の縮小に苦しむ韓国メーカーは、LCDに代わるディスプレイ技術開発へと移行している。このうち、Samsung Displayは、マイクロLEDディスプレイと量子ドット(QD)ディスプレイの研究開発を“2トラック”で進めている。Son氏によれば、Samsung Electronics(以下、Samsung)は、マイクロLED TVで主導権を握ろうとしているという。同社は米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2020」(2020年1月7〜10日)で、家庭用のマイクロLED TVを公開した。Samsungは現在、75〜110型(75/88/93/110)のマイクロLED TVをラインアップとしてそろえている。Son氏は「マイクロLED TVの成功は、さまざまなサイズを実現できるかにかかっている」とコメントした。
マイクロLEDメーカーは、製造プロセスにおける一つ一つの課題を解決すべく開発を進めているが、とりわけ品質の向上と製造コストの低下を重要視している。現在、マイクロLEDの製造では4インチのサファイア基板が主流だが、それを6インチ、8インチへと移行しようとしている。また、垂直構造、フリップチップといった、LEDチップの構造についても模索が続いている。
ディスプレイメーカーにとっての最大の課題の一つは、マイクロLEDをパネルのバックプレーンに並べるトランスファー(移送)技術だ。さまざまなトランスファー技術があるが、Son氏によれば、現在は転写/レーザーが主流だという。いずれにしても、パネルが大型になればなるほど大量のマイクロLEDチップを並べなくてはならないので、1回の転写で、いかに多くのマイクロLEDを移送できるかがポイントになる。
IHS Markitが2019年6月に発表した予測では、マイクロLEDディスプレイの出荷台数は2026年までに1550万台に上るという。同予測によれば、2019年と2020年の出荷台数は1000台にも満たない予測だが、今後製造コストが下がるにつれて価格も下がり、TVの他スマートウォッチ、AR(拡張現実)システム、スマートフォンなどにも用途が広がっていく見込みだ。
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