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高周波雑音を確実に減衰させるチップビーズ福田昭のデバイス通信(230) 2019年度版実装技術ロードマップ(40)(2/2 ページ)

「2019年度版 実装技術ロードマップ」を紹介するシリーズ。前回から「4.2 EMC対策部品」の概要を解説している。今回は、代表的なEMC対策部品の1つである「チップビーズ」を解説する。

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小型化と高周波化、高温対応が進む

 チップビーズは3つの方向で進化している。小型化、高周波化、高温対応である。サイズでは電源系と信号系では違いがある。電源系では定格電流の大きな部品が使われるので、主力のサイズは1608(1.6×0.8mm)とやや大きい。近い将来には1005(1.0×0.5mm)サイズへ移行するとみられる。信号系では電源系よりも小さなサイズが主流である。現在の主流は0603(0.6×0.3mm)とかなり小さい。ここまで小さくなると定格電流の低さや雑音吸収能力の弱さが問題となる。さらに小さな0402(0.4×0.2mm)サイズへと移行する勢いは鈍い。


チップビーズの将来予測に関するアンケートの結果。JEITAが2018年に実施したもの 出典:JEITA

 高周波化では、チップ内部の配線の巻き方を変更したチップビーズがある。従来のチップビーズでは、チップの長手方向と幅方向に配線し、チップの高さ方向に配線を巻いていた。このとき巻線と外部電極が近接した部分には寄生容量が生じ、高周波領域のインピーダンスを下げてしまう。

 この問題を防ぐために、チップの高さ方向と幅方向に配線し、チップの長手方向に配線を巻く構造のチップビーズが登場した。この構造だと巻線と外部電極が離れており、寄生容量が小さい。このため、高周波領域のインピーダンスを向上できた。またこの構造は巻数を多くできるので、小型化にも適している。

 なお呼称がメーカーによって違うので注意されたい。例えば、村田製作所では従来品を「縦巻きタイプ」、高周波対応品を「横巻きタイプ」と呼ぶのに対し、TDKでは従来品を「横巻型」、高周波対応品を「縦巻型(ギガスパイラ)」と呼んでいる。

 最後の高温対応では、自動車のエンジンルーム内に設置したECU(電子制御ユニット)への応用を想定した。150℃を超える高温下での動作保証が要求される。例えば村田製作所は2017年9月に、150℃での動作を保証した3216(3.2×1.6mm)サイズ車載用チップビーズ「BLM31KN_BHシリーズ」を発売した。最大定格電流は4Aである。2019年10月には太陽誘電が、150℃での動作を保証した1608サイズの車載用チップビーズ「FB TH1608」の量産を開始した。最大定格電流は2.25Aである。


太陽誘電が2019年10月10日に発表した1608サイズの車載用チップビーズ「FB TH1608」。同社のニュースリリースから。なおこの図面は実装技術ロードマップには掲載されていない

次回に続く

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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