パンデミック後の半導体製造、ボトルネックになるのは日本なのか:湯之上隆のナノフォーカス(23)(6/6 ページ)
ついに「パンデミック宣言」が出た新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威は続き、さまざまな業界に影響が及んでいる。製造業/半導体業界は今後、どのような局面を迎えるのか。実は、終息のメドが立った際、最も早く立ち直るべきは日本なのである。
感染拡大が続く日本
徹底的にPCR検査を行った韓国とは対照的に、日本ではPCR検査をスムーズに行うことができない状況が続いている(拙著記事:「新型コロナ陽性者の発覚封印のため検査阻止か…日本列島がダイヤモンド・プリンセス号化[※外部サイトに移動します])。図14に示したように、新規の死亡者数こそ少ないが、感染者は毎日のように報告され、そして増え続けている。
2月25日時点で、医療ガバナンス研究所の上昌広・理事長は、「感染者の大部分は無症状あるいは軽症だ。彼らは見落とされている。私は、新型コロナウイルスは既に国内にまん延していると考えている」と主張している(2月25日付Japan In-depth記事『遺伝子検査行う体制作り急げ』)。
東アジアでは、感染源となった中国が峠を越え、PCR検査をやりまくった韓国もピークを過ぎ、台湾は(最初から)制圧に成功している。現時点で、終息が見えないのは日本だけである。
日本が半導体製造のボトルネックに?
もしこのまま、日本国内の感染拡大が止まらない場合、多くの日本企業のアクティビティーが次第に低下し、いずれ停止する恐れがある。そうなると、半導体産業に限って言えば、各国の製造装置メーカーに部品や設備を供給することが困難になり、各種製造装置ができなくなり、加えて各種半導体材料の供給も滞るかもしれない。
つまり、日本製の製造装置、その部品や設備、各種材料が十分供給されず、韓国ではメモリ工場の稼働率が落ち、台湾ではファウンドリーが稼働できなくなるかもしれない。そして、中国にあるホンハイの組み立て工場は、十分な半導体を調達できず、各種電子機器の生産が滞る、という悪循環に陥ることになる。要するに、世界の半導体製造において、日本がボトルネックになる可能性がある。
現在、世界の多くの国がパニック状態にあるように思う。今後、世界はリーマン・ショック時を超える大不況に陥るかもしれない。しかしいずれ、人類は新型コロナウイルスを封じ込め、人々は日常を取り戻すだろう(そう信じたい)。世界がコロナ・ショックから立ち直り、各種電子機器の需要が回復し、半導体の絶対量が必要不可欠になったときに、日本企業のアクティビティーが低下したままの状態では困るのである。日本が早期にコロナ対策に勝利し、一日も早く日本企業が健全な企業活動を再開できることを願ってやまない。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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