新型コロナ対策にこそ、5G/IoT/AIが活用されるべき:大山聡の業界スコープ(27)(1/2 ページ)
新型コロナのエレクトロニクス業界への影響は徐々に深刻になりつつある。今後、どのような状況になるか予想が付きにくいが、現時点でわれわれが考えるべきことについて整理してみたい。
2020年2月20日に公開した前回記事で「新型コロナのエレクトロニクス業界への影響はどの程度か」について述べさせていただいた。「4月前後にピークを迎えるという専門家の予測を前提に、今のような状況が2020年前半6カ月間継続する」と仮定して、半導体市場の成長を10%程度押し下げる影響があるだろう、と予測した。しかし、それから1カ月ほどがたった今、その程度で済めば「御の字」ではないか、という状況に変わりつつあるようだ。この記事が公開された後も、時々刻々と状況は変わるものと思われるが、現時点でわれわれが考えるべきことについて整理してみたい。
前回記事が公開された直後、調査会社Gartnerが2020年の世界半導体市場予測を下方修正した(参考記事)。従来の「前年比12.5%増」から「同9.9%増」へ、2.6%の修正幅である。筆者の「同20%以上から10%以上へ」に比べるとかなりマイルドな修正だが、「この予測は新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めが2020年3月末までに終わるというベストケースでの想定」とのことなので、同社もさらなる下方修正の必要がありそうだ。
景気の後退が極めて深刻な問題に
新型コロナウィルスの発生地である中国の武漢では、まだ終息が確認されたわけではないが、ホンダの武漢工場が3月11日から稼働を再開するなど、最悪状態を脱しつつあるようだ。日本は相対的に感染者数が少ないとされているが、諸外国に比べて検査の件数が少ないため、公表されている感染者数の数字を鵜呑みにしてはいけない、という意見も聞かれる。その一方で、「コロナが原因で亡くなった」という事例が少ない、という点はポジティブに見てよいだろう。しかし、小中学校は休校、東京ディズニーランドは休園、プロ野球もJリーグも開催延期、大相撲は無観客興業、春の甲子園(選抜高校野球)は中止、そしてわれわれビジネスマンも「極力自宅勤務」「外来アポはキャンセル」といった異例の事態が続いている。自宅をオフィスにしている筆者などは、面談がメールや電話会議に変更された結果、「今日は家の外に一歩も出なかった」という日も珍しくなく、閉塞感が漂っているのが現状である。テレビやネットのニュースを見ても、仕事の関係者と会話をしていても、出てくるのはコロナウィルスの話ばかりだ。
しかし日本はまだマシな方で、イタリア、イラン、韓国、スペインなどではコロナウィルス感染による死者の数も増えており、WHO(世界保健機関)は3月11日にパンデミック(世界的な大流行)宣言を行った。専門家の間では「むしろ宣言が遅すぎた」という意見もあり、このままでは終息の見通しが付かない、長期化の恐れがある、という指摘が増え始めた。7月に東京五輪が予定通り開催されるかどうかも危ぶまれているのだ。
ニューヨーク、東京、ロンドンの株式市場では株価が暴落しており、ニューヨークでは「1987年のブラックマンデー以来」、東京では「バブル崩壊が始まった1990年以来」という悲劇である。
このままでは、コロナウィルスに感染しなくても、景気の後退が極めて深刻な問題になりつつある。特に日本人は、他国の方々に比べて周囲との協調性をより重要視する傾向があるらしく、集団で似たような言動、行動を起こすことによって、ブームやパニックを引き起こしやすい、と言われている。リーマンショック当時は、景気の悪化が懸念されたために消費活動が一斉に自粛され、2009年は他国よりもGDP(国内総生産)の落ち込みが大ききかった、という結果を招いた。東日本大震災の時のように、生真面目さや我慢強さがパニックを抑え込むこともあるが、被災者のことを考えて娯楽活動を自粛したり、景気の悪化を心配して消費を抑え込むなど、経済面ではマイナス効果を増幅させるような側面もあった。
今回のコロナウィルス騒動でも、マスクが不足するのは仕方がないとして、トイレットペーパーが不足するという「デマ情報」にさえ、多くの人が反応してパニック現象が起きてしまった。通常の日常生活が送れなくなると、われわれは冷静な判断力を失う危険性がある。「コロナウィルス」という見えない敵は確かに脅威ではあるが、これはもはや「人類の敵」であり、国内外における共通の問題である。世界中の英知を絞って対処することが重要だろう。
唐突に聞こえるかもしれないが、このような問題にこそ「5G(第5世代移動通信)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)」が活用されるべきではないだろうか、と筆者は考えている。
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