新型コロナ対策にこそ、5G/IoT/AIが活用されるべき:大山聡の業界スコープ(27)(2/2 ページ)
新型コロナのエレクトロニクス業界への影響は徐々に深刻になりつつある。今後、どのような状況になるか予想が付きにくいが、現時点でわれわれが考えるべきことについて整理してみたい。
5G/IoT/AIで「人類共通の敵」に立ち向かえ
例えば中国・武漢市の武漢大学中南医院では、コロナウィルスを検知するためにAIソフトウェアを利用する実験が進められている。患者のスクリーニングや、感染している可能性が高い患者のさらなる観察や検査を効率よくできるようになるという。
また米国シンシナティ大学では、感染症の診断をスピードアップする装置が開発された。マラリアやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などのほか、コロナウィルスの診断もできるという。その装置は、ガムほどの大きさの使い捨てプラスチックチップと、クレジットカードサイズのアダプターがセットになったもので、プラスチックチップを口に含み、唾液を染み込ませる。このチップをアダプターに差し込み、そのアダプターをさらにスマートフォンに差し込むと、アダプター内の3つの光学センサーが作動。検出抗体の発光の様子を読み取ってデータ化し、スマートフォン経由で医師のもとに送信する。この装置からデータを受け取った医師は、すぐにも陰性/陽性を判断できるという。
コロナウィルスの正体がより明確になれば、保菌者や感染者を特定するためのセンサーを開発することも可能になるだろう。「見えない敵」を「見える化」してしまえば、感染拡大を防ぐ上で極めて有効な手段になる。さらには隔離された患者に対して遠隔治療を施すなど、コロナウィルスに対しては「5G/IoT/AI」を活用しうるポイントがたくさんあるのだ。
筆者は医学的な専門知識を持ち合わせていないので、詳しいことは分からない。だが、コロナウィルス感染者への治療薬としては、エボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル」、HIV感染症に対する治療薬として承認されている「カレトラ」、新型インフルエンザに備えて国が200万人分を備蓄している「アビガン」、などがすでに有力な候補として挙がっているらしい。いずれも十分な臨床実験を経てからでないと普及させるわけにはいかないのだろう。しかし、世界各地で感染死者が増えている現在、手続きや確認作業の効率化や情報の共有化など、5G/IoT/AIを活用しながら、人類共通の敵であるコロナウィルスを完全にコントロールできる状態にしてほしい、と切に願っている。そして、こういう時にこそ、エレクトロニクスが人類に多大な貢献をした、と実感したいものである。とにかく一刻も早く、この閉塞感から解放されたい。WHOがさっさと終息宣言を出して、予定通り東京五輪が開催されれば、きっと国内外に活気が戻ってくるだろう。
筆者プロフィール
大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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