折り畳み、5G、1億画素…… 新たな挑戦を続けるGalaxy最新モデルを解剖:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(43)(1/4 ページ)
今回は、Samsung Electronicsの2020年モデルスマートフォン2機種を取り上げる。1つは、縦方向にディスプレイを折り畳める「Galaxy Flip」。もう1つは、第5世代移動通信(5G)に対応し、1億800万画素カメラを搭載する「Galaxy S20 Ultra 5G」だ。
2020年3月、いよいよ日本でも第5世代移動通信(5G)の商用サービスが始まり、各社から続々と5G対応スマートフォンの発売についてアナウンスされている。5Gという新しい技術が導入されることでスマートフォン自体も大きな変化を遂げつつある最中ともいえる状況だ。テカナリエでは毎月特徴のある(特に半導体プラットフォームに特徴があるものを重視)スマートフォンを入手し分解している。今回は2020年に発売されたSamsung Electronics(以下、Samsung)製スマートフォン2機種を取り上げたい。
縦方向にディスプレイを折り畳める「Galaxy Flip」
1台目は2020年2月に日本でも発売になった縦方向にディスプレイが折り畳めるスマートフォン「Galaxy Flip」である。日本では2019年に発売された折り畳みスマートフォン「Galaxy Fold」と今回報告対象のGalaxy Flipがそれぞれauで販売されている(弊社では海外から輸入した海外モデルを分解の対象にしている)。
図1は、2020年2月に発売されたGalaxy Flipの梱包箱と、本体をやや折り畳んだ状態の外観、そして、背面の上下カバーを取り外した状態である。梱包箱は2重になっていて、外箱には「Z」の文字、内箱には「Flip」の文字が記載されている。
図1では閉じた状態と開いた状態のほぼ中間に位置する状態の写真しか載せていないが、完全に開いた状態では通常のスマートフォンとほぼ同じサイズ形状になる。そして、閉じた状態ではスマートフォンのほぼ半分の大きさ(厚さはそこそこ大きい)になる。折り畳み時はワイシャツの胸ポケットにスッポリ収まるサイズだ。ガラケーのように折り畳めば手の中に収まる状態だと思ってもらえばよい。ガラケーの場合、半分がディスプレイで半分が操作ボタンだったが、操作ボタンがディスプレイになったように見ることもできる。
背面のカバーを取り外すと下部には非接触充電(Qi)用のコイル、上部には閉じた状態でも時計や着信などが確認できるセカンドディスプレイが備わっていることが確認できる。
図2は内部のメイン基板を取り外した状態だ。基板には通信処理、情報処理の2つの大きな機能があって多くの半導体チップがビッシリと並んでいる。一方でより長い時間の稼働ができるように電池が上部と下部の2カ所に設置される構造になっている。
近年、このように2基の電池を搭載するスマートフォンが増えている。従来のスマートフォンであれば板状の中に電池を入れるので1個の長方形型がメインだった。その後Appleの2017年モデル「iPhone X」では2個の電池をL字型に配置するという“2個使い”がなされ、翌、2018年の「iPhone XS」ではL字型の異形電池が採用されていた。基板はより小型化され、その空いたスペースに2個の電池や異形での電池を搭載するという方向にスマートフォン内部は変わってきているわけだ。高度なコンピューティングと高速通信であっても、今ではわずか数平方センチメートルの基板でほとんどの処理ができてしまう。さらに基板の面積を小型化するために基板の2層化も進んでいる。
図2のようにGalaxy Flipでは通信/情報処理基板は2層化され、縦積み構造になっている。
こうした縦積み構造は2つの利点があるので、Samsung製のみならず、多くのメーカーのスマートフォンで採用される主流技術の1つになっている。2つの利点のうち1つは前述のように面積。2層化することは住宅の2階建てと同じで小さな面積、すなわち敷地を有効に活用することができる。
2つ目の利点は、住宅と同様に1階と2階を使い分けることができるということだ。スマートフォンの場合は特性(ノイズや周波数、電圧などデバイスによって相容れない差がある)別や機能別に階を分けるという使い方が多い。こうした2層基板も2017年のApple iPhone Xから採用されたもので、情報処理は1階、通信関係は2階と分けることにより、より特性の良いものを作りやすくなるという利点がある。Galaxy Flipでは2個の電池、2層化基板、さらに折り畳みディスプレイによる2画面という3つの「2」が備わっている!
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