新型コロナのPCR検査を約1時間で、英新興企業が開発:臨床現場への展開も開始済み(1/2 ページ)
英国の新興企業であるDnaNudgeは、COVID-19のPCR検査が1時間で行える、Lab-on-a-Chipの小型キットを開発した。できるだけ早く認可を取得したい考えだ。
1時間で新型コロナウイルスのPCR検査が可能に
新型コロナウイルス(COVID-19)については、各国が、短時間で結果を得られる検査システムを競うように開発しており、多くのバイオメディカル関連企業にとって優先事項となっている。そのような企業の一つである英国DnaNudgeを創設したChris Toumazou氏によると、同社のLab-on-a-chip(チップ上に集積された検出素子)をベースとした検査システムが間もなく検証テストを終えて、現場への配備を認可されることが見込まれているという。
Toumazou氏は、英国Imperial College Londonで教授を務める人物である。DnaNudgeは2020年初め、食料品店の中でDNA検査を実施できる、携帯可能なLab-on-a-chipを発表した。このデバイスを用いると、ユーザーは遺伝子プロファイルに基づく自らの栄養必要量に見合う食品を買い求めることができる。このシステムは現在、わずか1時間という迅速さでCOVID-19を検出できるPCR(polymerase chain reaction)検査の実現に向けて改良が進められている。
DnaNudgeのソリューションは、同社が特許を所有する小型分析装置「NudgeBox」とカートリッジを用いて、現在のラボベースのPCR検査にかかる時間を大幅に改善するというものである。既存のPCR検査では、患者が結果を得るまでに少なくとも1〜2日かかる。DnaNudgeのシステムは、ゲノムDNAの抽出プロトコルと、マルチプレックスリアルタイムPCR増幅を組み合わせたもので、簡単に使える機器と低コストの使い捨てカートリッジで構成されている。綿棒を直接カートリッジに差し込めば、分析に用いられるボックスにそのまま入る仕組みだ。
このプロセスで高い精度を確保するには、多くの重要な要素を正確に制御することが求められるという。コアの溶解と固相DNAの抽出プロトコルは、カートリッジの中心部と、アレイに送られる精製素材に統合されている。アレイでは、特定の遺伝的変異を見つけ出すため、72の独立したDNA増幅反応が極めて注意深く制御およびモニタリングされている。
同システムは、University of Cambridge、英国を拠点とする技術コンサルタント会社のTTPと共同で開発された。クラウド通信の専門知識や生物化学的検定法の開発の他、システムエンジニアリングから、熱制御、熱光学、熱設計、熱製造に至るまで、さまざまな専門知識が駆使されている。
Toumazou氏は、EE Timesに対し、患者の頬をぬぐった綿棒からDNAを検出して増幅するというコンセプトについて、プリンタの世界に似ていると語った。同氏は「このシステムの心臓部はファームウェアとプロセッサである。ボックスの中には、数々のプロセッサが用いられた最新のエレクトロニクスが詰め込まれており、カートリッジを回転させるサーボ装置も制御している」と述べた。Toumazou氏は、DnaNudgeの検査デバイスの特長は、小型の1チップ光学アレイだと説明する。「小型の光学アレイに72個ものプレートがあるので、COVID-19の検査に必要な全てのプライマーをのせることができるのだ」(同氏)
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