新型コロナのPCR検査を約1時間で、英新興企業が開発:臨床現場への展開も開始済み(2/2 ページ)
英国の新興企業であるDnaNudgeは、COVID-19のPCR検査が1時間で行える、Lab-on-a-Chipの小型キットを開発した。できるだけ早く認可を取得したい考えだ。
英国保健省は臨床現場への展開を開始
英国保健省は、DnaNudgeのCOVID-19検査用カートリッジを1万個調達し、臨床現場への展開を開始した。Toumazou氏は、「患者の検査の初期検証で、当社の技術は優れた結果を出している。DnaNudgeの検査は、検査室が不要で、医療現場で大規模に利用できる消費者向けサービスとして開発された。大規模な集団検査を実施できることから、非常に大きな可能性を秘めていると確信している」と述べる。
同氏は、「できるだけ早く認可を取得したい。CEマークの認証基準に完全に適合していなくても認可が受けられるように医薬品・医療製品規制庁に要請している」と付け加えた。Toumazou氏は、これが実現すればどれくらいのテストを実施できるのかについて、「NudgeBoxアナライザー40台で1週間に1万4000回、2000台で1週間に100万回の検査を実施できる。2020年5月末までに約30万個のカートリッジを用意し、7〜8月ごろには100万個を用意したいと考えている」と述べている。EE Timesが、「新興企業であるDnaNudgeがそれだけの量に対応できるのか」と尋ねたところ、DnaNudgeからは、「製造企業の確保はできている。BenchmarkがNudgeBoxアナライザーを、Jabilがカートリッジを製造する契約を結んでいる」という力強い答えが返ってきた。
今後の計画についてToumazou氏は、「次世代NudgeBoxアナライザーの光学チップを、英DNAeが開発した半導体DNAシーケンシング技術『LiDia-SEQ』で代用する計画だ」と述べた。DNAeは、Toumazou氏が複数運営する別会社のうちの1社である。米国食品医薬品局(FDA)は2020年4月、LiDia-SEQを”ブレークスルーデバイス“に指定し、同技術による最初の分析を許可している。
LiDia-SEQは、半導体をベースにした診断プラットフォームである。分析と読み出しを1個のシリコンチップ上で迅速に行える。イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を使用して、核酸の構成単位であるヌクレオチドを単純な電気信号として検出する。ヌクレオチドは核酸の段階的な構築中に組み込まれているため、水素イオンを放出し、これを電気信号として検出することができる。一致しない場合は、水素イオンは放出されず、信号は検出されない。この方法は、標準的なCMOS半導体チップ上でDNAやRNAのシーケンシングに広く適用できる。大型で高価なDNA分析装置に搭載される蛍光色素やラベル、精密光学機器は不要である。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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