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もはや怪談、「量子コンピュータ」は分からなくて構わない踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(1)量子コンピュータ(1)(4/9 ページ)

「業界のトレンド」といわれる技術の名称は、“バズワード”になることが少なくありません。世間はそうしたバズワードに踊らされ、予算がバラまかれ、私たちエンジニアを翻弄し続けています。今回から始まる新連載では、こうしたバズワードに踊らされる世間を一刀両断し、“分かったフリ”を冷酷に問い詰めます。最初のテーマは、そう、今をときめく「量子コンピュータ」です。

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大爆笑レベルで誤解していた「量子コンピュータ」

 さて、量子コンピュータの勉強を始めて、私は、たくさんのことを「絶望的に勘違い」していることを知るに至りました。

 これは、私が「頭の中で量子コンピュータを作ってみる」という仮想的な日曜大工をしている最中に出てきた疑問から、見えてきました。

 疑問は大きく3つありました。「(1)量子ビットをどうやって作るんだ?」「(2)量子ゲートを作る素子は何なのだ?」と「(3)量子コンピュータの同期(クロック周波数)は、どうやって決めるんだ?」です。

 私は「(1)量子ビットは自然界の量子を使う」「(2)量子ゲートは核反応(核分裂、核融合)的なプロセスで実現する」「(3)クロック周波数は、量子スピンの角速度(たぶん、10-21秒のオーダの超高速回転)で決まる」、などと思っていました。

 ――爆笑レベルの大誤解でした。

 まず、そもそもの定義として、量子コンピュータは、「量子の性質を使って計算する計算機」であって、「量子をダイレクトに使う計算機ではありません」(正確に言うと、これも正確ではありません(後述))。

 また、私は、この世界に「量子」という物質があると思っていたのですが、これも大間違いでした。量子とは、原子そのもの、または、原子を構成する物質の全部のことだったのです。

 私は、量子コンピュータの記事の中で、「量子とは何か」と記載された記事を見つけることができませんでした。

 また、量子コンピュータは、「無条件で超高速計算リソースが得られ」「汎用計算能力があり」「NP困難問題を軽々と解き」「量子コンピュータは既に商用利用可能な状態にある」などのウワサについて調べましたが ―― 全部ウソ(あるいは、大げさ)でした。

 このウソは誰に原因があるのか ―― これは、もちろん、「私」であり「私の勉強不足」ですが、それを除けば、「量子コンピュータ」というバズワードをばらまいている「メディア」であり「メディアの勉強不足*)」です。

*)編集者注:ギク……グサ……ゴフッ(←吐血)

 そしてこれが、バズワードの典型的な性質です。

 バズワードとは、設計もせず、製作もせず、実験もせず、計算もせず、そしてデータとしてすら取扱いもしていないうちから、それが「あるもの」、または「有用なもの」として勝手に認識されて、流布される点において、非常に悪質です。

 このような悪質なものが、なぜ存在し続けられるのか? それは、バズワードを、技術的に訳が分からない状態にしたままで、ステークホルダーに「金を出させる」という大きな効果があるからです。

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