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プロセッサ市場の下剋上なるか? Intelを追うAMDを躍進させた2人の立役者湯之上隆のナノフォーカス(25)(4/4 ページ)

プロセッサ市場では、ある異変が起きている。Intelが長年トップに君臨しているこの市場で、AMDがシェアを急速に拡大しているのだ。今回は、AMDの躍進の背景にいる2人の立役者に焦点を当てよう。

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リサ・スー対ジム・ケラーの対決

 天才設計者のジム・ケラーがアーキテクトした高性能プロセッサを、AMDのリサ・スーCEOは、世界最先端の微細化プロセスを有するTSMCに生産委託しシェアを拡大している。Intelに対するAMDの優位性は動かしがたいように思われる。

 そして、リサ・スー率いるAMDは、Intelの独壇場となっているサーバ用プロセッサ市場にも進出し始めた(図6)。リサ・スーがCEOに就任した2014年にほぼゼロだったAMDのシェアは、2019年Q4に4.5%に上昇した。


図6:AMDのサーバ用プロセッサの市場シェア 出典:Tom's Hardwareの記事を基に筆者作成(クリックで拡大)

 今後の見通しについて、米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatt Bryson氏は、EE Timesの記事「TSMCの2021年見通しは好調、AMDのシェア拡大で以下の様に述べている。

「現在、AMDでは売上高全体の約50%を占める製品が、TSMCの7nmプロセスで製造されている。2021年までには、ほぼ全てのAMD製品に、TSMCの最先端プロセス技術が適用されるようになるだろう」

 「PC/サーバ市場におけるAMDのシェアは、2022〜2023年にかけて約40%増加するとみられる。IntelからAMDへと市場シェアが移行することで、TSMCの売上高はさらに10億米ドル増加する見込みだ」

 ところが、AMDの快進撃に待ったをかける人物が出現した。現在のAMD躍進の立役者の一人である天才設計者ジム・ケラーが2018年4月30日に、何とIntelに移籍していたのである!

 つまり、これまで何度も設計の世界で偉業を成し遂げてきたジム・ケラーが、リサ・スーCEOの前に立ちはだかることになったわけだ。

 ジム・ケラーを得たIntelとリサ・スー率いるAMDの対決は、どうなるのだろう? 今後、プロセッサの覇権争いから目を離すことができない。

(次回に続く)

⇒連載「湯之上隆のナノフォーカス」記事一覧


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筆者プロフィール

湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。


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