実用化困難とされた「バイポーラ型蓄電池」を量産へ:コストはリチウムイオン電池比2分の1以下(1/2 ページ)
古河電気工業と古河電池は2020年6月9日、長年実用化が困難とされてきた次世代型蓄電池「バイポーラ型蓄電池」を共同開発した、と発表した。リチウムイオン電池と比べトータルコスト2分の1以下を実現するといい、「電力貯蔵用電池として理想的なものだ」と説明している。2021年度中にサンプル出荷、2022年度から製品出荷を開始する予定だ。
古河電気工業と古河電池は2020年6月9日、長年実用化が困難とされてきた次世代型蓄電池「バイポーラ型蓄電池」を共同開発した、と発表した。リチウムイオン電池と比べトータルコスト2分の1以下を実現するといい、「電力貯蔵用電池として理想的なものだ」と説明している。2021年度中にサンプル出荷、2022年度から製品出荷を開始する予定だ。
拡大する再エネ市場に求められる「理想的な」蓄電池
再生エネルギー活用がグローバルで加速する中、安定した電力供給実現のため、長周期用途の電力貯蔵用電池へのニーズが高まっている。両社によれば、長周期用途の電力貯蔵用電池の世界市場は、2019年の3000億円規模から2030年には8000億円規模にまで成長することが見込まれているという。
ただ、長周期用途の電力貯蔵用電池としては、有力視されているリチウムイオン電池においてもリサイクル性や安全性、コスト面で課題があるなど、求められる要件(エネルギー密度、設置スペース、寿命、リサイクル性、安全性、トータルコスト)を全て満たすものは存在しないという。そうした中で両社は、リチウムイオン電池よりリサイクル性や安全性に優れた特性を持つ鉛電池に着目。これをバイポーラ構造とすることで、エネルギー密度やコストなどの課題を克服し、「全要件を満たす理想的な電力貯蔵用蓄電池を実現した」としている。
「揚水発電並み」の低コスト化&高いエネルギー密度を実現
今回発表したバイポーラ型蓄電池は、1枚の電極基板の表と裏にそれぞれ正極と負極を有するシンプルな構造が特徴。薄い鉛箔を集電体としており、従来の鉛蓄電池と比較し金属材料を削減できることなどから、大幅な低コスト化を実現。同時にその構造から、従来の鉛蓄電池と比べ体積エネルギー密度は約1.5倍、重量エネルギー密度は約2倍を実現するという。単電池のエネルギー密度としてはリチウムイオン蓄電池の方が優れているものの、リチウムイオン蓄電池の場合は離隔距離の規制などがあることから、「設置面積当たりのエネルギー量はバイポーラ型蓄電池が上回る」としている。充放電特性は0.2CAで、リチウムイオン蓄電池に匹敵する。
消費電力当たりの単価は、リチウムイオン蓄電池と比較し50%以下となるうえ、鉛電池の特性から、リチウムイオン蓄電池の場合に求められる空調設備も削減できるなど、初期投資、ランニングコストの面でのメリットもある。これらの結果、トータルコストはリチウムイオン電池と比較し2分の1以下を実現している。このコストについては、揚水発電の設置コストと同等(2万2000円/kwh)を目標としており、「開発が順調に進めば同等のコストのものが提供できる」としている。
製品のサイズは縦300×横300×厚さ250mmとする予定で、容量は50Ah、定格電圧は48V、寿命は15年に相当する4500サイクル。電池を複数組み合わせることでメガワット級までの蓄電池容量に対応可能。また、バッテリーマネジメントユニット(BMU)を搭載することで電池パックとして提供できるとしている。
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