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中低温域で高伝導度を示すプロトン伝導体を発見化学置換やドーピングは不要

東京工業大学は、化学置換などをしなくても高いプロトン伝導度を示す新型のプロトン伝導体を発見した。豪州原子力科学技術機構(ANSTO)と共同で、中性子回折測定と結晶構造解析を行い、高いプロトン伝導度の発現機構も明らかにした。

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燃料電池やセンサーなどへの応用に期待

 東京工業大学理学院化学系の村上泰斗特任助教と八島正知教授らによる研究グループは2020年6月、化学置換などをしなくても高いプロトン伝導度を示す新型のプロトン伝導体を発見したと発表した。また、豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のヘスター・ジェームス博士と共同で中性子回折測定と結晶構造解析を行い、高いプロトン伝導度の発現機構も明らかにした。

 プロトン伝導体とは、外部電場を印加したときに、プロトン(H+:水素イオン)が伝導する物質である。特に、燃料電池の電解質材料にプロトン伝導体を用いると、従来の酸化物イオン伝導体を用いた燃料電池に比べ、デバイスの低温動作が可能となる。ただ、中低温域(300〜600℃)で高いプロトン伝導度を実現するには、従来の材料だと化学置換やドーピングが必要となっていた。

 研究グループは今回、六方ペロブスカイト関連酸化物の1つである「Ba5Er2Al2ZrO13」が、中低温域において高いプロトン伝導度を示すことを発見した。この新材料はもともと、結晶中のh′層に酸素空孔が存在しているという。このため、化学置換をしなくても高いプロトン伝導度を示すことが分かった。結晶構造解析と熱重量測定を行うことによって、実際にh′層へプロトンが存在し、電気伝導を担っていることも確認した。

左は新型プロトン伝導体「Ba5Er2Al2ZrO13」の結晶構造、右は「Ba5Er2Al2ZrO13」と他のプロトン伝導体におけるプロトン伝導度の比較 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学

 従来のプロトン伝導体は一般的に、格子中にある陽イオンの一部を、低価数の陽イオンで化学置換をして酸素空孔を導入。プロトン伝導体と水蒸気H2Oが反応して酸素空孔にOが入り、プロトンはプロトン伝導体に取り込まれてプロトン伝導性が現れるという。

 今回発見した新型プロトン伝導体「Ba5Er2Al2ZrO13」は、立方ペロブスカイト型酸化物以外の物質群において、中低温域におけるプロトン伝導度の値が最も高いという。六方ペロブスカイト関連酸化物には、「Ba5Er2Al2ZrO13」以外にも、構造中にh′層を持つ物質が多く存在しており、これらも高いプロトン伝導度を示す可能性があるとみている。

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