東京工大、Ga金属クラスターから超原子を合成:13原子クラスターはハロゲン似
東京工業大学は、樹状高分子のデンドリマーを用いてガリウム(Ga)の金属クラスターを合成し、「超原子」と呼ばれる特殊な粒子を作り出すことに成功した。
Ga以外の元素でも超原子を合成可能
東京工業大学科学技術創成研究院の神戸徹也助教と山元公寿教授らによる研究グループは2020年2月、樹状高分子のデンドリマーを用いてガリウム(Ga)の金属クラスターを合成し、「超原子」と呼ばれる特殊な粒子を作り出すことに成功したと発表した。
超原子は、物質の新しい構成単位として注目されている。構成する原子の種類や組成によって性質が変化する。周期表にはない新元素を、人工的に作り出せる可能性もあるという。ただ、素材として活用するには、量合成やクラスターの組成を制御する手法を確立することが求められていた。
神戸氏らの研究グループはこれまで、アルミニウムクラスターの超原子を合成し、その物性について解明してきた。今回は、Gaを用いて新たなハロゲン超原子を作り出すことに成功した。Gaは融点が30℃と極めて低く、低融点合金材料や水銀の代替金属として利用されている。今回の研究で、Gaを1nm程度のクラスターにすることで、性質が劇的に変化することを明らかにした。
合成する方法はこうだ。まず、樹状高分子であるフェニルアゾメチンデンドリマーに塩化ガリウムを集積する。これを還元して、Gaの原子数を13個や3個など精密に規定した金属クラスターを合成した。こうして作製したクラスターについて酸化還元特性や硬さを調べた。この結果から、13個のGa原子からなるクラスター(Ga13)は、ハロゲンに似た性質を持つことが分かった。
研究グループによれば、今回はGaを用いたが、別の元素でも超原子を作ることは可能だという。
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