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TSMCも? 米中貿易摩擦で業界は過剰在庫に直面か鍵を握るHuaweiとApple(1/2 ページ)

TSMCと、同社を担当するアナリストたちは、エレクトロニクス業界のサプライチェーンで過剰在庫が生じているとの認識で一致している。しかし、両者の見解はここから分かれるようだ。

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 TSMCと、同社を担当するアナリストたちは、エレクトロニクス業界のサプライチェーンで過剰在庫が生じているとの認識で一致している。

 しかし、両者の見解はここから分かれるようだ。

 TSMCのチェアマンを務めるMark Liu氏は、2020年6月9日(台湾時間)に開催されたプレスイベントにおいて、「当社が以前に発表した2020年業績予測に変わりはない。2019年の設備投資費は149億米ドルだったが、2020年には150億〜160億米ドルに増やす予定だ」と主張する。

 また、TSMCにとっての最大顧客であるAppleに関しては、「『iPhone』の売上高も堅調に伸びている」と述べる。

 さらに同氏は、「米国政府は、米国製の機器、設計ツールを使用してHuaweiの子会社であるHiSiliconに半導体を供給している半導体メーカーに対し、制裁措置を課しているが、私個人としては、今後それを緩和していくだろうと楽観視している」と述べている。

 また、TSMCは2020年7月半ばまでに、米商務省に対し、HiSiliconに半導体チップを販売するためのライセンスを申請する予定だという。

Huaweiによる備蓄

 一方アナリストたちは、「サプライチェーンで過剰在庫が発生していることや、TSMCにとってナンバー2の顧客であるHiSiliconへの売り上げがなくなる可能性があることなどから、2020年後半にはTSMCをはじめ、他のエレクトロニクスメーカーにも影響が及ぶのではないか」と懸念している。

 英国・ロンドンに拠点を置くArete Researchでシニアアナリストを務めるBrett Simpson氏は、「現在のシナリオには、勝利者が存在しない。世界サプライチェーンにとって、この先約12カ月間は、非常に困難な期間となるだろう。半導体を調達している企業の多くが、事業継続性について心配している」と述べる。

 Simpson氏は、「Huaweiや、その競合企業、Huaweiエコシステムのメーカー各社による備蓄が心配だ。しかも、それだけではない。現在の状況が、どの程度まで拡大していくのかという懸念もある。Huaweiを孤立させるための措置という枠を超えて、突如として半導体業界全体が関与する幅広い問題へと発展していくのではないかということだ」と指摘する。

 これに対し、TSMCは異なる見解を示している。

 TSMCのチェアマンLiu氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により、雇用にも影響が及んだが、これは不景気の時と同じような状況だといえるだろう。しかし、人々のライフスタイルが変化することで、新しい技術の導入が必要になり、TSMCのビジネスもけん引されることになる。例えば、今や米MIT(マサチューセッツ工科大学)や米University of California at Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)などの米国の大学では、オンラインによる遠隔授業を受けられるようになった。また、パンデミックの中で、オンラインエンタテインメントやデジタルストリーミングを利用する人々が増加した他、技術業界の関係者たちも、PC上で仕事や会議を行っている」と述べる。

 「新技術への移行は、通常であれば3年間かかるところ、3カ月に圧縮された形だ。景気がV字型の回復を遂げる可能性はないが、技術業界では状況が異なる」(同氏)

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